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推理小説

【著者】 秦 建日子     【装丁】 河出文庫 317頁
【価格】 590円+税    【発行】 2005年12月

劇作家やシナリオライターなど多彩な顔をもつ秦建日子が、本書で小説家デビューを果たした。
「推理小説」という奇妙な題名の推理小説である。
最初の殺人事件が起きたのは、新宿の公園。被害者は、鈴木弘務という印刷会社の社員と、龍居まどかという高校3年生だ。現場には、「アンフェアなのは、誰か」という木の栞が残されていた。唯一の手がかりとも言える。
捜査に当たる刑事、雪平夏見はとびきりの美人である。コンビを組む安藤一之は、雪平に振り回されながらも彼女といい関係を保っていく。
新宿の事件後、次の事件を予告する文章が「推理小説」と題して多くの出版社へ送られてきた。中堅出版社、岩崎書房の編集者、瀬崎一郎もその一文を目にすることになる。瀬崎は、T.Hという署名からある人物のことを思い出すのだが・・・。
事件は、岩崎書店が主催したパーティーの会場で起こった。瀬崎の友人、音羽出版の栗山創平が飲み物に混入されていた毒物により死亡する。
そして次の殺人予告は、女子大生だ。
一連の事件の進行につれて、被害者の共通項が明らかになってくる。推理小説には、推理小説なりのルールがある。著者は、アンフェアであってはいけない、というメッセージを、各現場に残された木の栞に語らせている。
犯人は、最初から登場人物のなかにいるのだ。状況をつぶさに観察すれば、おのずと明らかになるはずだ。
著者は、それが推理小説のフェアなあり方だ、と言いたいのだろうか。





2012.6.18

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