このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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悪夢のエレベーター
【著者】 木下 半太 【装丁】 玄冬舎文庫313頁
【価格】 600円+税 【発行】 平成19年10月
考えてみれば、あまりにも日常的に使われていながら、エレベーターほどリスクのある道具もない。一度乗ってしまえば完全に密室で、故障でもすれば見通しのつかないまま閉じ込められることになる。故障しないまでも、地震国日本では、緊急停止も珍しくない。
エレベーターといえば連想するのがフランス映画、「死刑台のエレベーター」だ。この映画は、完全犯罪をもくろんだ犯人が忘れ物をして会社へ引き返したところ、守衛に電源を止められエレベーターに閉じ込められて計画が狂いだす。
密室としてのエレベーターを材料に使ったところは本書も同じだが、意図的に密室を作ったところが映画と違う。
実のところ、面白さという点では、かの映画に勝るとも劣らない。
本書では、小川という男がエレベーターの中で目を覚ますところから話が始まる。
エレベーターは、どうやら故障して止まっているらしい。ドアは閉じたままだ。小川のほかに乗っているのは3人。ヤクザ、オカマ、それに自殺願望の若い女だ。これだけでも、相当怪しい設定だ。
小川は、浮気相手の部屋から出てきてエレベーターに乗り、この災難にあった。妊娠9か月の妻から、陣痛が始まったのですぐに来てほしいと連絡があったばかりだ。それでもこの事態ではどうしようもない。そして事件が起きる。
話は、読者の意表をつく形で展開していく。意外な黒幕は最後まで分からない。
ミステリー小説は往々にして話が複雑になり、登場人物の多さとも相まって読者が理解しにくくなるものだが、本書は実にシンプルで読みやすい。
読みだしたら止まらない、最後まで一気にいってしまうコメディーサスペンスの傑作だ。
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