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犯人に告ぐ

【著者】 雫井 修介     【装丁】 双葉文庫(上)326頁(下)344頁
【価格】 (上)600円+税(下)619円+税   【発行】 (上)(下)2007年9月

神奈川県警で刑事畑を歩む巻島史彦は、45歳にして警視に昇進。ノンキャリアとしては順調に出世していたが、捜査一課特殊犯係二班を束ねるポストに就いたばかりの時、[ワシ]と名乗る誘拐犯の事件により大きく立場が変転した。
事件は、5歳の男児誘拐。犯人は2000万円の身代金を要求していた。ところが、警察の対応のまずさもあって、身代金の受け渡しに失敗し、子どもは殺害されてしまった。受け渡し当日、巻島は犯人らしき男を発見したが、花火大会の雑踏のなかで見失った。警察完敗の言い訳を刑事部長から押し付けられたのが巻島だ。ところが記者会見の席上、巻島はマスコミの挑発に乗せられて切れてしまい、失敗の責任をすべて負う形で左遷された。
それから6年、[ワシ]の事件は迷宮入りの状態であったが、川崎市でまたしても凄惨な事件が発生した。5歳から7歳の男児を狙った連続殺害事件である。この1年間の間に4万人からの捜査員を投入したものの、犯人の影すら見えてこない。
そこへ《バッドマン》と名乗る犯人から、人気ニュース番組「ニュースナイトアイズ」へ犯行声明が届いた。4件目の犯行の直後であった。
そうしたなか、神奈川県警本部長として赴任してきたのは、あの[ワシ]の事件で陣頭指揮をとった曽根警視監だ。あの事件で巻島に責任を負わせた張本人の曽根が、今度の一連の事件で再度主役に選んだのが巻島である。
曽根の奇策は「劇場型犯罪」に対して「劇場型捜査」で対抗しようというものだ。かくして巻島は、「ニュースナイトアイズ」に出演して犯人にメッセージを送るよう働きかけることになった。
呼び掛けに対し、数多くの偽手紙が届く。が、ついに犯人からのメッセージが届いた。
とはいえ、巻島の行動は必ずしも順調には進まない。警察内部にも反感があり、あるいは足を引っ張るような行為もある。
それでも読者が最後まで読み進められるのは、巻島のキャラクターの魅力であろう。
早く結末を知りたい、との思いにかられながら、ついつい時間を忘れてしまうだけの魅力をもった作品である。





2012.7.13

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