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チョコレートゲーム

【著者】 岡嶋 二人     【装丁】 双葉文庫311頁
【価格】 571円+税    【発行】 2000年11月

昭和61年、第39回日本推理作家協会賞長編賞を受賞した作品である。
物語は、作家の近内泰洋が、妻から中学3年生の息子・省吾が学校に行っていないことを知らされる場面から始まる。息子と話をするために省吾の部屋へ行ってみると、買った覚えのないパソコンやラジカセなど、中学生としては高価な品物が目に付いた。
ベッドに寝ていた息子が立ち上がると、その身体には無数の痣が。心配する泰洋をよそに金を無心する省吾。しかし、父がその願いを聞き入れないとみると、悪態をついて部屋を出てしまう。
やがて、省吾の同級生が殺される事件が発生し、続いて第二の殺人事件まで起きてしまう。事件現場で省吾らしき少年が目撃されたことから、省吾は容疑者と目されるようになる。泰洋は、息子を信じたいと思いながらも、疑いの目で見てしまう。
その矢先、省吾が自殺する。ここから父の、息子の容疑を晴らす戦いが始まる。
本書では、中学生の間で流行っているらしい「チョコレートゲーム」や、第一の被害者が事件前にもらした「みんなジャックのせいだ」など、意味不明の言葉がキーワードとなって物語を牽引していく。
しかし、実は、これらのキーワードが真相にたどり着く決定打となっているわけではない。
父親の捜査を困難にしているものとして、忌まわしい事件を早く忘れたいとする学校関係者や、同級生の親の感情を巧みに織り込んでいる点も見逃せない。
探偵役の近内泰洋は、知り合いの編集者・蜂須賀の助けをえて捜査を進めていく。
編集者が万馬券を当てたという話や、教師が生徒からラジオを取り上げたというさりげないエピソードが、実は事件解決の大事なカギになっている。
「チョコレートゲーム」とは何か。中学校で何が起きているか。極端な例と言えば言えないこともないが、あっても不思議でない、と思わせるところが筆の力である。




2012.7.15

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