このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

忘れ雪

【著者】  新堂 冬樹   【装丁】 角川文庫581頁
【価格】 743円+税    【発行】 平成17年2月

物語は、深雪という少女が傷ついた子犬を拾うところから始まる。
深雪は両親を交通事故で失ったため、伯父夫婦の家に厄介になっている。公園で途方に暮れている深雪に声をかけたのが、桜木という、近くの動物病院の息子である。二人は、子犬を桜木の家へ運んで手当てした。介抱の甲斐あって子犬は命をとりとめることができた。
折しも深雪の家(とはいっても伯父夫婦の家だが)は事業不振で、深雪を養うことができない。相談の結果、深雪は京都に住む伯父の弟のところへ越すことになった。
深雪は拾った子犬に「クロス」という名前をつけ、飼わせてもらうことを条件に京都へ旅立った。
深雪は京都へ行く前、桜木に7年後、この公園で会うことを約束させたのだが、桜木の方は真剣に受け止めず、その日を忘れてしまった。
深雪は東京の美大への入学を機会に、自分の正体を明かすことなく桜木に接近するが、桜木は深雪を思い出すことができない。
この時、桜木は父親が開いた動物病院を継いでいた。折しも、看護師の金井が桜木に好意を寄せていたが、桜木は金井の愛を受け入れることができない、という状態のとき深雪と出会った。
桜木は、深雪に対して心が傾いていく。しかし、深雪には南という婚約者がいる。
桜木を巡る関係は不安定さを増していく。
結果は当然、波乱に満ちたものにならなざるをえない。
純愛物語が思わぬ方向に展開する。600ページ近い長さを感じさせない一冊である。






2012.8.7

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