一外交官の見た明治維新
【著者】 アーネスト・サトウ 【装丁】 岩波文庫 (上)290頁 (下)294頁
【価格】(上)700円+税(下)700円+税 【発行】(上)1960年9月(下)1960年10月
アーネスト・サトウ(1843−1929)はイギリスの外交官で、明治維新前後を通じ、25年間も日本に滞在した。
本書は1862年(文久2)、著者がイギリス公使館の通訳として初来日してから1929年(明治2)に一時帰国するまでの6年半の回想録である。
来日したのは尊皇攘夷運動が最も過激な時期である。事実、彼が日本に到着してから1週間もしないうちにあの有名な生麦事件がおこった。
幕府はイギリスの鹿児島遠征を許し、結果としてイギリスを薩摩に接近させることになった。その後、同様のことが馬関戦争を通じて長州との間にもおこる。攘夷の急先鋒だった長州は、四か国連合艦隊との戦争を通じて資本主義国の武力を思い知り、イギリスと手を結んでしまうのだ。
彼は、これらの戦争の現場へ赴くなど積極的に行動する。
在日中、幕府との外交交渉の場に立会うのはもちろんのこと、当時の日本を代表する多くの人々と交流した。 また一方で、日本と日本人に対して深い理解を示し、歴史・風物・習慣などを満ち溢れる好奇心とともに紹介している。
イギリス人としてのプライドを保ちながらも、見方は客観的で公正である。
彼が賜暇帰国するとき、すでに天皇は東京に移り、日本の封建政治は名実ともに滅びていた。
本書は日本の歴史の大転換期の記録として資料的価値も高く、明治維新に関する多くの書物に記述が引用されている。
NHK大河ドラマにより、幕末・維新への関心が高まっている。
この時代を、類のない視点で見せてくれる貴重な一冊である。