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2012.9.21

文庫ライブラリ
水の迷宮

【著者】 石持 浅海         【装丁】 光文社文庫  396頁
【価格】 629円+税         【発行】 2007年5月

3年前、「羽田国際環境水族館」に勤めていた片山雅道が館内で不慮の死をとげた。その命日に当たる日、不可思議な事件がおきる。
アルバイトの脇坂寛子は、館内で館長宛の紙袋を見つける。
館長が中身を確認すると、携帯電話がでてきた。そこへ非通知のメールが入る。
10円程度の金魚を100万円で買わないか、というメールに続いて、『東京湾の汚染はひどいですね』という犯罪実行メールが入った。
飼育係の古賀孝三はあわてて、東京湾を模した水槽J1へ駆けつけた。水槽へはウィスキーらしきアルコールが投げ込まれており、水族館の職員は飼育している魚を予備水槽へ移した。
その後も携帯メールで次々と犯行通告が行われ、実際そのとおりになるのだが、何故か展示されている魚類が死ぬような甚大な被害にはならなかった。
当日は、片山の亡くなった日ということで、水族館へは彼に所縁の多くの人が訪れていた。古賀の同窓で電機メーカー勤務の深澤、特殊アクリルメーカーの社長の宮脇、片山の妻、貴子など。
そうこうするうち、飼育係長の大島が、施錠した水槽裏で死体になって発見される。鍵は職員しかもっておらず、犯行は俄然内部の者の仕業との見方に傾く。当然のことだ。
このため、館長は、自分たちで事態を収拾させようとする。
古賀は深澤と解決に向けて動き、ついにその真相に肉薄する。
小説にはさまざまな舞台があるが、水族館は身近でありながら、一般の人は舞台裏を知らない世界である。作者は、十分に読者の好奇心を満たすことに成功した。




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