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2012.11.30

文庫ライブラリ

死刑執行人の苦悩

【著者】大塚公子   【装丁】角川文庫221頁
【価格】420円+税 【発行】平成5年7月

著者は、死刑をテーマに活動を続けているノンフィクションライターである。
本書は死刑執行にあたる刑務官へのインタビューを中心に、彼らの苦悩を世に晒すことによって、死刑制度へ批判的な姿勢を貫いている。
刑務官の服務規定に「死刑の執行をする」という項目はない。しかし、刑務官研修所を出て、刑場付設の拘置所あるいは刑務所に採用された刑務官は、死刑囚舎房担当、あるいは死刑執行官の役が割り当てられるという不運にあうこともある。
死刑執行の儀式は、法務大臣が「死刑執行命令書」に押印するところから始まる。法務大臣が死刑の執行を命じたときは、5日以内に執行しなければならない。
刑務官は、国家が行う殺人の執行者として、その職にある限りこれを拒否することはできない。国家権力の末端にあって、気の進まない仕事を続けざるをえないのだ。
著者は、数多くの刑務官OBに会い、インタビューをしている。しかし、その多くの人は、口が重く本音に近づくのは容易ではない。
死刑制度の是非は、被害者、加害者の立場から語られることが多い。
本書の特質は、死刑を執行する者の立場から死刑制度を語っていることによる。執行官の苦悩が制度の是非を決める本筋とは思えないが、こういう視点もあるのかと思わせられた一冊である。







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