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定刻発車

【著者】  三戸祐子   【装丁】 新潮文庫 404頁
【価格】  590円+税  【発行】 平成17年5月


「定刻発車」(新潮文庫)は、交通図書賞・フジタ未来経営賞を受賞した名著である。筆者は、経済・経営ライターの三戸祐子氏。鉄道本の枠を超えた高い視点と広い視野に、知的好奇心を刺激される一冊だ。
わが国の鉄道は、正確さで世界に類をみない。その秘密はどこにあるのだろうか。著者の関心は、そこから始まる。
本書の特徴の第一は、定時運行が実現した背景を、社会的・歴史的に説きおこしている点である。このため、日本人の行動習慣や時間感覚を江戸時代にまで遡って検討する。
特徴の第二は、膨大な資料に裏付けられた実証的分析であり、参考文献の多さには驚くばかりである。本文には各章ごとに注釈がついており、あたかも学術論文のようなつくりである。
「定刻発車」を実現するためには、巨大な鉄道システムの各要素が正確に機能し、「安全・正確・迅速」という相反する目標を同時に達成しなければならない。
秒単位の運転技術が求められ、様々な攪乱要因に柔軟に対応できるダイヤが必要だ。もちろん乗客の行動も定時運行の重要なファクターである。
私たちが日常、当たり前として受け止めていることの重みを、改めて教えられた。




2010.7.3

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