ストックホルムの密使
【著者】 佐々木 譲 【装丁】 新潮文庫 (上)483頁 (下)437頁
【価格】 (上)590円+税 (下)552円+税 【発行】 (上)(下)平成9年12月
本書「ストックホルムの密使」は、「ベルリン飛行指令」(No25)「エトロフ発緊急電」(No1)に続く“第二次世界大戦秘話三部作”の完結編である。
1945年7月、すでにベルリンは陥落し、アメリカとソ連の関心は、戦後体制を見据えた日本攻略へと移っていた。
一方、日本国内では、将来の展望も見出せないまま、陸軍の徹底抗戦派と政府・海軍の和平推進派とが「国体護持」をめぐり激しい議論を重ねていた。
中立国スウェーデンのストックホルム駐在海軍武官大和田市郎は、アメリカの原爆開発とソ連の対日参戦という極めて重要な情報を入手し、本国へ暗号電を打電するのだが、果たして電文が政府上層部まで届くかどうか確信がもてない。
あまりにも重大な内容だけに、海軍担当レベルで握りつぶされるかも知れない。ならば、密使を日本へ送り込むしかないだろう。
この役目を引き受けたのが、ポーランド亡命政府の情報将校コワルスキと日本人で遊び人の森四郎である。この二人が、ストックホルムからスイスを経由してソ連横断に挑戦する。もちろん、情報の重要さを知ったイギリス、アメリカ、ソ連などの追撃をかわしながらの冒険行である。
歴史的事実と虚構(だろうと思われる)が同時に進行し、読者を引き込まずにはおかない。
それにしても、大国の恐ろしいまでの独断と、追い詰められた日本の視野の狭さには歯がゆさを覚えるばかりである。