このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



【著者】 司馬 遼太郎  【装丁】 新潮文庫 (上)511頁 (中)571頁 (下)444頁
【価格】 (上)667円+税 (中)743円+税 (下)590円+税 
【発行】 (上)(中)(下)平成15年10月

「峠」は昭和43年、新潮社から刊行されたが、もともとは毎日新聞の新聞小説である。
「竜馬がゆく」の完成と「坂の上の雲」のスタートとの間に挟まって、しかも主人公が河井継之助という馴染みのない人物だけにやや印象の薄い作品だが、両大作をつなぐ架け橋として高い評価をえている。
長岡藩の藩士である河井は32歳のとき、江戸出府と諸国遊歴を願い出て許される。秩序を重んじるだけが政治のありかただと思っている藩庁からみれば、口の過ぎる河井は持て余し者だったのだろう。
しかしながら徳川幕藩体制が瀕死の状態のこの時期、旧来の体制では藩の舵取りはできない。藩は河井という人物を必要とした。旅から帰った河井は重職につき、洋式銃器を整え富国強兵に努めるなど藩政改革に乗り出した。
折もおり、京から大政奉還の知らせが届く。そして鳥羽伏見の戦い。
彦根藩など幕府の有力藩の寝返りが続き官軍は勢いをえて東進する。
さて、長岡藩は如何にしてこの難事を乗り切るべきか・・・。
家老となった河井は、慧眼の持ち主でありながら、なぜか敵わぬ戦いの道を選ぶ。藩のありかたとして、“風雲のなかに独立すべし”の思いは最後まで変わらなかった。
著者はそのあとがきで、“この「峠」において、侍とはなにかということを考えてみたかった”と記している。




2010.7.23

文庫ライブラリ

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください