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国マニア −世界の珍国、奇妙な地域へ!−

【著者】 吉田 一郎   【装丁】 ちくま文庫 258頁 
【価格】 680円+税   【発行】 2010年7月

2005年12月に交通新聞社から刊行された単行本の文庫版である。
香港でジャーナリストとして活躍し、日本に帰国してからは「大宮の自治と独立」を掲げて“さいたま市議”に当選した異色の経歴をもつ著者が、世界に散在する珍妙な国や地域を紹介する。
カテゴリーごと5章の組み立てで、紹介されている国と地域は50に及ぶ。
極小ながらも立派に自立している国もあれば、他国に依存しなければやっていけない国もある。民族・宗教などの対立で紛争が絶えない地域があるかと思えば、不自由な状態にありながらも何とか安定を保っている地域もある。
南太平洋に浮かぶ島ひとつだけの国、ナウル共和国は東京都港区ほどの面積に1万人ほどの人々が暮らしている。公式の首都すらない国だが、島全体が燐鉱石でできているため極めて裕福であった。採掘作業は海外からの出稼ぎ労働者にまかせ、国民には年金が支給されていた。男も女も一切仕事をせず、遊ぶか寝るかの生活だ。食事をつくることすらせず、中国人経営の食堂で外食するのが当たり前、という状況だったらしい。
ところが、−当然のことながら− 資源には限りがある。20世紀末には鉱石を掘りつくしてしまった。果たしてその後、この国はどうなったか・・・。
ナウル共和国の例はさておき、読み進めるにしたがって見え隠れするのは、大国のエゴとその力に翻弄されてきた弱小国、住民の悲劇であり、今日でもその構図は変わっていない。
国家が成立するためには、「領土・国民・主権」の3要素が必要であるが、そういう常識が当てはまらない場所が世界には数多く存在することを改めて知らされる。
各国(地域)の紹介がそれぞれ4〜5ページ程度と短いため、内容は表層的だが、興味・関心を喚起させるためのインデックスと心得て読むには十分であろう。





2010.8.18

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