鉄道員は見た!
【著者】 難波とん平・梅田三吉 【装丁】 新潮文庫 231頁
【価格】 400円+税 【発行】 平成21年6月
本書は「鉄子の部屋」というメールマガジンが2003年、「鉄道員ホントの話!?」という題で単行本になり、2009年に増補・改訂されて新潮文庫になったものである。
著者は関西私鉄のローカル線で勤務する現役の運転士と駅員だという。現役の鉄道員ならではの小項目が2〜4ページ程度で多数、分かりやすく説明されている。
ペンネームからの連想とは異なり、執筆態度は真面目である。まえがきに「我々は鉄道を飯の種にしていますが、鉄道ファンではありません。職業人として、毎日の仕事をしているだけで・・・」云々とあるとおり、あくまでもプロの立場で書かれている。現場でなければ分からないことが多く興味深い。
例えば「雨は怖い!」という項目では、運転士の緊張がひしひしと伝わる。
「ブレーキを込めても、滑る滑る、電車が止まらない。(中略)車輪はレール上で回転を止め、ほとんど摩擦を生じることなく滑っている」。この状態が非常に恐ろしいのだという。
乗客である私たちが気がつかないところで、運転士は悪戦苦闘しているのだ。
ちなみに「恐怖!時速100キロからの制動」では、雨が降っていない場合の制動距離の計算法が紹介されている。速度の2乗÷20(m)という簡単な式だ。
時速60キロの場合は、60×60÷20で180メートル。まさに「電車は急に止まれない」。
鉄道員は安全のため、想像以上に神経を使っている。私たち鉄道ファンは、あくまでもファンとしての節度をもって鉄道に接していくことが必要だ。