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系列
【著者】 清水 一行 【装丁】 角川文庫 353頁
【価格】 552円+税 【発行】 平成10年2月
自動車産業における多重構造の実態を暴いた企業小説である。
大成照明器は資本金80億円、従業員3600人の東証1部上場企業であるが、もともと町工場からスタートした会社である。成長の過程で東京自動車が筆頭株主になり、その系列に組み入れられた典型的な部品メーカーだ。
物語の時期は昭和から平成に変わるころである。
東京自動車から大成照明器に対する締め付けは極めて厳しい。大成照明器は、何をするにも東京自動車の了承を得なければならない。とりわけ納入価格の引き下げ要求には、同社から派遣されている役員の取次ぎで、応諾せざるをえないのが実情だ。
今回の事件は、東京自動車が役員人事に口を出してきたことよる。それも創業家である浜岡の社長退陣である。オーナー意識の強い浜岡とすれば、もちろんこの要求を甘受することはできない。
それにしても、会社の“偉い人たち”の私欲の強さには開いた口がふさがらない。これでは、現場で真面目に働いている者はやりきれない。
さて、本書はノンフィクションではないが、まったくのフィクションでもない。といいながら、読み始めればすぐに、実在の会社が連想される仕組みである。
いわば、山崎豊子風のつくりになっている。
2010.9.15
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