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【著者】 三浦 綾子 【装丁】 新潮文庫 389頁
【価格】 552円+税 【発行】 昭和48年5月
実在の人物をモデルにした物語である。
主人公の永野信夫は祖母のトセによって育てられる。父親の貞行は日本銀行に勤めており、経済的に不自由はない。母は亡くなったと言われていた。
ところが、トセの突然の死で母親と妹の存在を知ることになる。母はキリスト教徒のため昔気質の姑とあわず、家を出ていたのだ。
信夫の人生を方向付けたのは、小学生のとき一家が夜逃げをして北海道へ渡った吉川である。吉川には足の不自由なふじ子という妹がいた。
月日は経ち、信夫は北海道へ渡って鉄道職員になる。時にふじ子は病をえて回復の見込みはないのだが、そのふじ子と結婚する決意をする。
信夫は結納のため札幌へ向かうが、途中旭川の塩尻峠で機関車から客車が離れ、暴走を始める。信夫は自らの命を犠牲にして乗客を救うのだが・・・。
当時、この事故については諸説が唱えられたらしい。自殺説、過失死説、犠牲説のうち、著者が採り上げたのは犠牲説である。
本書は、愛と信仰を貫いて短い生涯を終えた一青年に対する、同じキリスト教徒としての著者からの惜しみない賛歌である。
2010.10.6
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