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【著者】 堺屋 太一 【装丁】 文春文庫 301頁
【価格】 476円+税 【発行】 2005年4月
「団塊の世代」は、1976年(昭51)に単行本として刊行された小説である。四話からなるオムニバス形式の構成で、舞台は80年代前半にはじまり、80年代後半、90年代中葉、2000年へと続く。それぞれの物語はまったく関連性がないが、共通しているのは主人公がみな「団塊の世代」(1947から49年生まれ)であることだ。もちろん、話が進むにしたがって主人公は歳をとっていく。
この小説の最大の特色は、著者が開発した“予測小説”という手法だそうだ。経済分析の精度があがり、未来予測の正確性が向上したため、30年後(新版発行時)に振り返っても古さを感じさせない出来栄えの本書が誕生した、と自讃している。
終戦直後の1947年から1949年の3年間に、日本では約800万人の子どもが誕生した。直前の3年間と比べ20パーセント、直後より26パーセントも多いのである。著者はこの世代に「団塊の世代」という呼び名を与え、この人口の塊が将来どういう形で社会に影響を及ぼすかを小説の形で著したのが本書である。
第一話から第四話まで、それぞれの話の主人公は、電機メーカーの若手課長、自動車会社の総務課付課長、銀行の調査部副長、総理府の参事官と四人四様だが、それぞれ大学卒でそれなりに恵まれた立場にある。が、この世代はすべてが順風満帆とはいかない。
加齢していく過程で自身が社会変貌の最前線に立たされるとともに、あとへ続く者たちへ課題を残してゆく。「団塊の世代」は、つねに社会を牽引してきたようにみえながら、他の世代からみれば歓迎することのできない存在といえなくもない。
いま、「団塊の世代」は定年の時期を迎え、多くの人が第一線を退いた。さてこれからは、社会の中でどのような役割を果たしていくのだろうか。
2010.10.22
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