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【著者】 井上 靖 【装丁】 新潮文庫 337頁
【価格】 514円+税 【発行】 昭和33年12月
「風林火山」は、武田信玄の軍師として活躍した山本勘助の生涯(といっても世に出た後半生であるが)を描いた戦国時代小説の傑作である。
今川家の家臣宅に寄食していた勘助が、板垣信方の口利きで23歳の晴信(信玄)に仕えたのは50歳近くになってからのことである。それから約20年、川中島の戦いで戦死するまでを、魅力的な脇役を登場させながら描いている。ここでは信玄も名脇役である。
さらに物語に輝きを添えているのが由布姫だ。勘助の謀略により殺害された諏訪頼重の娘であるが、これまた勘助の計らいにより信玄の側室になり、勝頼を産む。類をみない美形であるのはもちろんのこと、怜悧で気が強い。わがままで勘助を悩ませるが、勘助はこの姫と勝頼が愛しくてたまらない。
本書は時代小説ではあるが、年表のように史実を追っているわけではない。合戦の描写にしても詳細な記述はない。そういう意味では当てが外れたと感じる読者がいるかも知れない。
戦国時代という過酷な環境のなかで、思いのままに生きようとした者たちの“心の風景”を描いたドラマと思って読んでみよう。
2010.10.26
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