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ウルトラ・ダラー


【著者】 手嶋 龍一  【装丁】 新潮文庫 448頁
【価格】 629円+税  【発行】 平成19年12月

評者(佐藤優)に言わせると、これは日本初のインテリジェンス小説ということになるらしい。フィクションでもノンフィクションでもなく、あらゆるレベルの情報を整理して起こりうるべき筋書きを構築したものである。
本書は北朝鮮による偽100ドル札づくりが主題であるが、その秘密を解き明かそうとするイギリスBBCラジオの局員(実は英国諜報機関員)を主人公にすえて話が展開する。
精巧な偽札はウルトラ・ダラーと呼ばれ、米国の威信と経済を混乱させるとともにウクライナ製ミサイルを調達する資金源になる。それも北朝鮮単独の企みではなく、この企みを支える国や組織があるから、ことは複雑だ。
作者はもともと著名なジャーナリストで、根っからの小説家ではない。
その視野の広さと知識の豊かさは驚くばかりだが、それだけに余計な薀蓄(うんちく)を詰め込みすぎたきらいがないでもない。本筋に沿ってサッパリとしたところがあってもよいのではないか、と思うのは教養不十分な人間の僻みだろうか。




2010.11.9

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