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仮釈放


【著者】 吉村 昭  【装丁】 新潮文庫 292頁
【価格】 514円+税  【発行】 平成3年11月

高校教師の菊谷史郎は不倫をはたらいた妻を殺害し、相手の男を刺傷したうえに、その母親を焼殺した。結果、無期懲役の刑を受けることになった。
死刑と無期懲役との差は大きい。死刑囚は拘置所で執行を待つのみであるが、無期懲役囚には仮釈放という形で社会に復帰する可能性が残されている。
菊谷は模範囚として服役したために、収監16年を経て仮釈放されることになった。確かに彼は刑務所の規則を遵守し、刑務官の信頼をえて釈放されることになったのだが、犯した行為を悔い改めているわけではない。裁判官は、服役によって罪を償うように諭し、自らを納得させて判決をくだしたのだろうが、被告人は罪の正否に納得したわけではない。このことが、次に起きる事件の伏線になっている。
さて、実際に釈放されてみると16年の年月はさすがに長く、あれほど焦がれていた塀の外は必ずしも住み心地のよいものではない。
服役中は毎日、何も考えずに過ごすことができた。起床時間、就寝時間はもとより、1日のスケジュールすべてが決まっており、三度の食事も保障されていた。
しかし、前科を負いながら独りで生きていくのは容易なことではない。もちろん、彼の周囲には善意で支えてくれる人が多数おり、傍からみれば十分恵まれているように思われるのだが、計算どおりにいかないのが人の世の常である。
徐々に生活に慣れ、社会復帰に向けて歩んでいるようにみえたのだが、その先には思いもかけない結果が待ち受けていたのである。




2010.11.20

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