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ノモンハンの夏


【著者】 半藤 一利  【装丁】 文春文庫 471頁
【価格】 629円+税  【発行】 2001年6月

ノモンハン事件は1939年(昭14)、満蒙国境付近で起きた日本軍とソ連軍との戦闘のことである。事件の原因は国境争いにある。日本の支配下にある満州国が、従来の国境線から10〜20キロほどモンゴル側に入ったハルハ川を境界と主張したことが原因とされる。
事件とはいうものの、双方で1万6千人以上の死者をだした本格的局地戦であった。5月に起きた紛争を第一次ノモンハン事件といい、7月から8月にかけて再発した紛争を第二次ノモンハン事件という。
戦争であるからには勝ち負けがある。戦死傷者数、戦車、装甲車、航空機の損害などの絶対数はソ連側が大きいが、戦争末期になるとソ連が圧倒的に優位であり、ソ連の主張が通って紛争が終結したことをみても日本の敗北であったといえよう。
ただし著者は、個々の戦術の巧拙に主題を置いているわけではない。
著者の目は、「事件」を起こした指導層の無責任さに向けられており、こうした体制によって、やがてやってくる破滅への道筋を見通している。
とりわけ、陸軍部内で重要な役割を担った“エリート軍人”の責任は、座視できるものではないと訴える。
「ノモンハンの夏」の初出は、1997年(平9)の別冊文藝春秋である。こうした本が出版されるまでには、戦後50年という時日が必要だったのだろうか。
著者は最後に、「そして人は何も過去から学ばないことを思い知らされる」と、歯噛みをする思いで結んでいる。



2010.12.8

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