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【著者】 湯本 香樹実 【装丁】 新潮文庫 218頁
【価格】 400円+税 【発行】 平成6年2月
ぼくが小学校6年生のときの話である。ぼく(木山)と山下、河辺は仲良し3人組で、何をするのも一緒だ。
そのころ近所に住む独り暮らしのおじいさんが死にそうだ、という噂が流れた。ぼくたち3人はおじいさんが死ぬ瞬間を見るために、毎日おじいさんの家を観察することにした。ぼくたちが“死”について関心を持つようになったのは、山下が田舎のおばあさんの葬式に出たからだ。ぼくも河辺も死んだ人を見たことはない。またとない機会到来だ。
おじいさんの家は、庭も建物もまったくといっていいほど手入れがされていない。ごみも放置されていて異様な臭いがする。
観察を始めてからしばらくして、おじいさんに気づかれた。それからお互い、なんとなく親しくなり、ぼくたちはおじいさんのすることをいろいろ手伝うはめになってしまった。
おかげで、ごみは片付き、家もきれいになった。死ぬはずだったおじいさんも何故か元気になったようだ。
さて、いまの日本に標準的家族構成というものがあるのだろうか。昭和40年代、都会では両親と子ども2〜3人の核家族が主流になった。工業化が進み多くの労働者を必要とした都会には、2世代世帯が合っていたのだ。
それがいまの日本では、母子世帯、老人世帯、パラサイトシングルなど、様々な形の家族がある。この本のおじいさんのように独り暮らしもめずらしくない。
ぼく(木山)の家をみても、両親の間が何かぎくしゃくしていて母親はアルコールに逃げている。山下は、父親の仕事(魚屋)を評価しない母親に尻を叩かれている。河辺は、父親に別の女性ができたため両親が離婚したらしい。
ぼくたちは“子ども”なだけに、大人のすることにいろいろ発言することができない。そう言ってはなんだが、結構けなげに生きていることを知ってほしい。
2010.12.10
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