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【著者】 志水 辰夫 【装丁】 新潮文庫 356頁
【価格】 552円+税 【発行】 平成6年1月
「行きずりの街」は、1991年度の「このミス1位」に輝いた作品で、それから20年近くたった現在でも、文庫版で多くの読者を獲得している。
女生徒との恋愛がスキャンダルになり、都内の名門校を追放されて郷里で塾講師をしている“わたし”は、失踪した教え子、広瀬ゆかりを捜しに12年振りに東京へやってきた。
ところが、尋ねあてたマンションにゆかりの姿はない。管理人の話では、ここ2週間くらい見かけないという。そもそも、そのマンションたるや、専門学校の生徒がアルバイトをしながら住めるような代物ではない。
わたしは、消えたゆかりを追いかけていくなかで、その失踪に自分を追放した学園が関係しているという意外な事実を知る。
自分の過去を清算し、自分自身を取り戻すための孤独な闘いが始まる。
学園内の権力争い、不正経理、殺人事件など、後半はハードボイルドそのものだが、その間に別れた妻との再会があり、恋愛小説としての要素も備えている。
人がそれぞれ自分の領分に甘んじ、周囲に目をつむっていると、結果として諸悪を許すことになりかねない。ことの大小はあるものの、平凡なサラリーマン世界でも、まま起こりうることといえよう。
2010.12.21
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