このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

こころ

【著者】 夏目 漱石   【装丁】 新潮文庫 371頁
【価格】 362円+税   【発行】 昭和27年2月

夏目漱石(1861−1916)の終局をなす秀作である。尾崎紅葉(1868−1903)や幸田露伴(1867−1947)と同年代の作家の作品が現在でも多くの人、とくに若者の支持をえている事実には、あらためて驚かされる。
本書は、上、中、下の3部で構成されている。
<上 先生と私>
明治末期、鎌倉へ旅行をしていた学生の「私」は、「先生」と出会い交流を始める。私は東京へ帰ってからも先生の家へ出入りするようになる。先生は奥さんと静かに暮らしており、世間との交流も薄い。
<中 両親と私>
私は大学卒業後、実家へ帰省する。父親が体調を崩したため、兄らとともに父の死を待ち受けていたのだが、そこに先生から分厚い手紙が届く。
「この手紙があなたの手に落ちる頃には、私はもうこの世には居ないでしょう」という文面に驚き、先生に会うために東京へ行く汽車に乗る。
<下 先生と遺書>
先生の長い遺書である。
両親を失ったため叔父に遺産管理を頼んだところ、その一部を騙し取られたこと、下宿へ同宿させた友人・Kと下宿のお嬢さんをめぐって確執があり、結局Kが自殺したこと、などなど・・・。
それまで、本人が語りたがらなかったことが切々と記されている。
小説には、寝る間を惜しんで読んでしまいたい、と思わせるものもあれば、じっくりと何度でも読んでみたいと思わせるものもある。
「こころ」は、通読しただけではなかなか理解できない。読むほどに疑問を沸き立たせる力をもつ深い内容の本である。
若いときに読んだ記憶を呼び戻しながら、再度挑戦してみよう。





2010.12.31

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