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白洲次郎 −占領を背負った男−

【著者】 北 康利    【装丁】 講談社文庫 (上)254頁(下)252頁
【価格】 (上)(下) 各495円+税   【発行】 (上)(下)とも 2008年12月

吉田茂のブレーンとして、戦後史に大きな足跡を残した白洲次郎の評伝である。
筆者はもともと証券投資関係の実務家である。それだけに正確な筆致で読む者を迷わせない。
白洲次郎は芦屋の実業家、文平の次男として生を受けた。文平は関西でも指折りの豪商である。次郎は中学卒業後、イギリスのケンブリッジ大学へ留学している。父からの仕送りは桁外れで、高級車を乗り回したり、貴族の子弟と遊んだりといった生活ぶりだった。
ところが、昭和2年、金融恐慌のあおりを受けて白洲商店が倒産してしまう。次郎は、留学生活を終えて日本へ帰ってこざるを得なくなった。
帰国後、牛場友彦により近衛文麿に近づくことになり、また結婚相手である正子の関係で吉田茂と知り合うことになる。
さて、次郎の本領が発揮されるのは、本書の副題にもあるとおり終戦後である。
昭和20年12月、次郎は吉田から終戦連絡中央事務局(終連)参与に任命される。
終連参与としての最初の大仕事は「憲法改正」だ。GHQの基本原則をめぐるやりとりは緊張感にあふれ、日本国憲法誕生のドキュメンタリーのようである。
昭和23年12月、次郎は第二次吉田内閣で、商工省外局の貿易庁長官になる。ここで通商産業省設立に動くが、官僚相手にことはスムーズに運ばない。
そして、さらなる大仕事が講和条約の締結だ。次郎は「特使」としてアメリカへ向かう。
昭和27年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効し、次郎の前に立ちはだかっていたGHQは、その役割を終えた。
本書は、白洲次郎という“黒子”からみた戦後史であり、教科書とは違った視点だけに興味深い。
好悪のはっきりした人物描写も小気味よく、時を忘れて読ませてしまう力をもった一冊だ。





2011.1.3

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