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戦場のニーナ

【著者】 なかにし 礼   【装丁】 講談社文庫 516頁
【価格】 819円+税    【発行】 2010年1月

1945年8月16日のソ満国境。ソ連軍の戦車に蹂躙された戦場で、赤ん坊の泣き声が聞こえる。奇跡的に生き残った女の子は目の下に怪我をしているが、命に別状はなさそうだ。見つけたボルコフ大尉は、この子にニーナという名をつけ、赤軍高官のムラビヨフ中将に預けて再度戦場に向かい戦死する。
ニーナは中国人の子として里子に出されるが、めぐり合わせが悪く、結局はムラビヨフの妹のソーニャの世話をうけることになる。住まいはウラル山脈のふもと、ヨーロッパとアジアの境にあるエカテリンブルグという町である。
ここでニーナは、ソーニャの跡を継いで、ルナチャルスキー記念国立オペラ・バレエ劇場のコレペティートル(ピアニスト)になる。
ここでユダヤ人の指揮者、ダヴィッドとの熱烈な恋に落ちるのだが、彼は密かに亡命を企てていた。ニーナは思いもかけず窮地に陥るのだが、ムラビヨフとソーニャは、ニーナを暖かく見守り助けてくれる。
ニーナは、たった一人のロシア残留孤児である。自分のルーツを尋ねようにも、たった1枚の写真だけでは手がかりとともいえない。自分が日本人であることが分かっただけで満足しなければならないのが現実だ。
国家という絶対権力に翻弄されながらも、健気に生きた女性の切ない物語である。



2011.1.25

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