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【著者】 深沢 七郎 【装丁】 新潮文庫 194頁
【価格】 362円+税 【発行】 昭和39年7月
本書には「楢山節考」のほかに3編が収まっている。「楢山節考」自体は60頁ほどの短編小説である。本稿は「楢山節考」について記述する。
作者の深沢七郎は山梨県石和町の生まれ。ギタリストとして日劇ミュージック・ホールに出演したりしていたが、1956年(昭31)、「楢山節考」で第1回中央公論新人賞を受賞して作家活動に入った。その後、放浪生活を経て、晩年は埼玉県菖蒲町でラブミー牧場を営んだり今川焼きの店を開いたりした。
「楢山節考」は民間伝承の棄老伝説をテーマにした小説で、おりんという老婆が主人公である。信州の山間にあるこの村では、70歳を目途に「楢山まいり」に行くしきたりである。村中や家々に食料が乏しいだけに、老人は楢山に捨てられなければならない。おりんは自らの運命をしっかりと受け止めて、進んで捨てられようとする型破りの女性である。親思いの息子、辰平はその日を一日延ばしにしようとするが、おりんに促されて腰をあげる。
山へ行く前の夜は振舞酒を出す。山へ行ってきた人を招待し、山へ行くのに必要なこと、守らなければならない決まりなどを教わるのだ。食べ物の少ない村だが、この日だけは前々から心がけて支度しておいたご馳走を並べ酒を飲む。
翌朝、辰平はおりんを背負い、まだ暗いなかを山へ向かって歩きだした。
2011.1.26
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