【著者】　海堂　尊　　　 【装丁】　宝島社文庫　（上）２９９頁　（下）３０１頁
【価格】　（上）（下）各４７６円+税　【発行】　（上）（下）２００８年９月

処女作「チーム・バチスタの栄光」で第４回「そのミス大賞」を受賞した海堂尊の第２作。
バチスタ・スキャンダルから９か月経った師走の東城大学病院が舞台である。
恒例の病院忘年会の日、愚痴外来の田口講師は神経内科の当直についていたが、ひょんなことから幻の歌手で酔いどれ迦陵頻伽と呼ばれる水落冴子の命を救うことになった。
一方、浜田小夜の勤務する小児科には悪性腫瘍のレティノブラストーマ（網膜芽腫）の患者、１４歳の牧村瑞人と５歳の佐々木アツシがいる。治療方法は眼球摘出しかない難病だが、この子たちの心のケア担当として田口が選ばれた。
瑞人の父は息子に無関心で、病院からの呼び出しにも応じない。その父親が何者かによって殺害された。
物語の後半は、この犯人探しに割かれることになる。
健康な者にとって病院は非日常的な存在である。反面、医療従事者にとって病院は日常そのものに他ならない。
視点が変われば、見えてくるものも変わる。医療の専門家ならではの話の進行が、素人の頭に刺激を与えてくれる。

２０１１．２．１７