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坊っちゃん

【著者】 夏目 漱石    【装丁】 集英社文庫 205頁
【価格】 257円+税    【発行】 1991年2月

あまたある小説のなかで、おそらく日本一多くの読者を獲得している一冊といって過言ではあるまい。漱石は1867年生まれ、明治の人である。140年以上前に生まれながら現代の若者の心を捉えている。まさに時代を超越した文豪というべきだろう。
小さいときから無鉄砲なおれは、四国の中学校の数学教師になった。正義感の塊のようなおれは、赴任先の学校の教師たちを通じて世の中の仕組みを知るところとなる。まったくこの世は、不合理、不公正、不条理としか言いようがない。
校長は狸。保身が身上で日和見、いわば世渡り上手だが、そのおかげで今の地位をえたような人物だ。
教頭は赤シャツ。若いが大学出だ。おしゃれとインテリぶったところが鼻につく。
その教頭の腰巾着が画学教師の野だいこだ。江戸っ子ぶるが、幇間言葉がいやらしい。
うらなりは英語の教師。没落士族で覇気がなく、影が薄い。
山嵐は数学の主任だが、無骨でデリカシーに欠けた男である。
こうした教師たちに囲まれて社会人としての生活がスタートするのだが、おれには決して素直に受け入れられるものではない。
それにしても、小説のなかでは松山について好意的な記述は見受けられない。にもかかわらず、松山の人たちが「坊っちゃん」の舞台になったことを素直に喜んでいるのは、漱石という人の力に負うところ大、というべきだろう。
<教訓>
①この社会は弱肉強食だ。往々にして悪人には力があり、善人に対して容赦はしない。しかも悪人面を表にださない。
②正しいと信じることを貫くことがよい結果を導くとは限らない。世の中は“暗黙の了解”で成り立っていることも多い。
③私たちは、多少なりとも自分の持っている“悪さ”を自覚している。しかし、身の安全を考えるとそれを払拭することができない。
④そもそも善人と悪人を明確に区分しようとすること自体無意味なことかも知れない。一概に判断することができないのが人というものだ。
⑤詰まるところ「坊っちゃん」の魅力の源泉は、“単純”とも思える真っ直ぐな行動への共感だろう。





2011.3.9

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