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【著者】 浅田 次郎 【装丁】 講談社文庫 323頁
【価格】 571円+税 【発行】 2004年4月
1970年(昭45)ころの陸上自衛隊普通科の隊内現場ルポである。作者の実体験に基づいたものだけに説得力がある。
自衛隊は不戦憲法のもとで生まれただけに、その存在の曖昧さは言うべくもない。当時は高度成長の真っ只中で、その気さえあれば仕事に困ることはなかった。それだけに自衛隊という“奇妙な組織”には、一般世間からはみ出したような人々が集まった。旧軍隊の生き残りもいるが、多くは地方連絡部員に街中で入隊を勧誘された若者だ。給料は安くても(15,100円)衣食住が保障され、自動車や危険物関係などの国家資格がとれるというのが謳い文句だ。少しでもその気をみせると基地の隊員食堂へ連れて行かれ、昼飯を食わせられてとどめをさされる。
本書は隊内で起こった9つのエピソードを短編連作としたものである。当時の自衛隊の内部が、作者特有のユーモアで描かれている。一方で、自衛隊との決別の辞とも受け取ることができる。いずれにしても、自衛隊賛歌でないことだけは確かである。
2011.3.13
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