このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

さよならドビュッシー

【著者】 中山 七里    【装丁】 宝島社文庫 415頁
【価格】 562円+税    【発行】 2011年1月

第8回(2009年)「このミス大賞」受賞作品。
高校1年生の少女・香月遥が語る一人称小説である。
遥の家族は、資産家の祖父・玄太郎、銀行員の父・徹也と母、無職の叔父・研三だが、父母を亡くした従姉妹の片桐ルシアが寄宿しており、家政婦の綴喜みち子が祖父の面倒をみている。
ことの発端は、遥が中学校卒業間際に祖父の起こした火事である。趣味のプラモデルづくりの最中発火し、塗料へ引火したものらしい。この火事で、祖父とルシアが亡くなった。遥も身体の3分の1に及ぶ大火傷を負う。新条先生の手術で外観は回復したものの、喉をやられたために生来の声を失い濁声になってしまった。
それでも遥は高校の音楽科へ進学し、ピアニストを目指す。ピアノの家庭教師になった岬洋介は、知る人ぞ知る新進のピアニストだ。実は彼、家庭教師以上に魅力的な人物である。
遥は火傷の後遺症に苦しみながらも努力を重ね驚異的な回復をするが、周囲の目は必ずしも暖かいものとは限らない。級友3人組の意地悪はその典型だ。
遥は不自由な身体になってはじめて、ハンディを負っている人の気持ちを知ることになる。
遥の努力は報われ、学校代表としてコンクール出場を果たす。岬との練習はますます厳しさをましていく。
この間、遥の周辺には次々と奇妙なことが起きる。母が神社の石段から落ちて死亡するという事件まで発生した。
本書は“音楽ミステリー”とでもいうのだろうか。事件の犯人探しは間違いなくミステリーの分野であるが、一方で曲の演奏解説は作者の得意とする分野で物語の白眉である。
加えて、努力は必ず報われるというスポコン的要素は、明るい展望を示すために欠かせない。
現代の小説に新たな分野を切り開いた傑作だ。





2011.3.26

文庫ライブラリ

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください