このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

甲賀忍法帖

【著者】 山田 風太郎   【装丁】 講談社文庫 359頁
【価格】 590円+税    【発行】 1998年12月

山田風太郎忍法帖シリーズの第1作である。
家康73歳のとき、老境にある彼には二つの心残りがあった。まずは三代将軍を指名して体制を固めること、しかる後に目障りな豊臣家を滅ぼすことである。
将軍候補は二人いる。いずれも秀忠と正妻・江与の間の子で長男の竹千代と次男の国千代である。長男が優れていればよいのだが、どうも次男の方が利発そうなので問題だ。徳川家の家臣は、竹千代派と国千代派に割れて権力争いをすることになる。家康とすれば目の黒いうちにこの事態を収拾したい。
そこで奇想天外ではあるが、服部半蔵の意見を入れ、伊賀と甲賀を争わせ、その勝敗により将軍を指名しようということになった。こうして両組から10人づつの忍者が選ばれた。戦いは生き残り方式で行われる。
当時、伊賀と甲賀は半蔵の仲介で休戦状態にあった。このため、甲賀弦之助と伊賀の朧は、もうすぐ結婚する予定にまでなっていたのである。この二人も敵味方に別れて殺しあわなければならない。なんとも過酷な運命である。
ところで本書に登場する忍者たちの術とはいかなるものだろうか。これがとても常人には理解しがたいものである。いわばマンガ的なのだが、そこは医学に造詣の深い作者のこと、立派な解説がついている。
たとえば不死身の忍者・薬師寺天膳の再生能力について、“下等動物にしばしばみられる再生現象は、表皮、子宮、腸、粘膜、血球など人間にも部分的にみられる”としたうえで、同人の場合、“再生能力のまったくない心筋や神経細胞も再生する能力があった”という。まるでiPS細胞の出現を予言したような記述には驚いてしまう。
してみれば、本書に登場する様々な怪しい忍術も、あるいは将来、現実のものになるかも知れないと思えば読んでいてなおさら楽しくなる。




2011.3.31

文庫ライブラリ

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください