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OUT

【著者】 桐野 夏生    【装丁】 講談社文庫 (上)446頁 (下)340頁
【価格】 (上)667円+税 (下)619円+税    【発行】 2002年6月

深夜の弁当工場で働く4人の主婦を中心に物語が展開する。
かつて日本では、一億総中流と言われたときがあった。もちろん事実はそんなことはないのだが、総体的に生活水準が安定していたのだろう。多くの人々が共通の認識をもっていた意義は大きい。
いまや我が国は格差社会といわれている。とくに問題なのは、格差が世代間で受け継がれていくことである。親の社会的ランクを子が継ぐ、といったケースが一般的になりつつある。精神的な意味も含めて、豊かさも貧しさも再生産されていく。
本書に登場する主婦らは社会の下層に属している。本書は下層の者たちが織りなす異端のドラマといえよう。
話の中心は香取雅子、43歳の主婦である。夫と息子との3人暮らしであるが、家族の気持ちは離反していて破綻状態だ。
吾妻ヨシエは50代半ば。職場では「師匠」と呼ばれるように腕がよいが、家庭では亡くなった夫の母親の介護に明け暮れる。娘が2人いるが、いずれも出来がよくない。
城之内邦子は内縁の夫と暮らしている。器量が悪いくせに派手好きで身持ちが悪い。街金に追われる毎日だ。夫は行方知れずになる。
山本弥生は若くて美人。しかし、夫がホステスに入れあげたあげく、バカラ賭博で身を崩し経済的に破綻状態だ。
この弥生が思い余って夫を殺してしまう。これに仲間3人が手を貸して死体を始末する。音頭をとったのは雅子だが、なぜ死体処理をする気になったのか、もうひとつはっきりしない。世間の常識では割り切れない“不条理”がつきまとうのが本書の特徴だ。
雅子の家の風呂場で死体をバラバラにする場面は迫真の描写である。さて、バラバラになった死体を捨てる段になり、邦子の不始末により警察にばれそうになるが、うまい具合にばれない。このあたりの著者の構成力のうまさには感心する。
さて、話はここで一段落する。ここで終わってもよいくらいだが、1回悪事に成功した雅子は、2回目の死体解体を請け負うことになってさらに物語が展開する。
1997年発表の本作品は、「このミステリーがすごい」の年間アンケートで国内第1位に選ばれたクライム・ノベルの金字塔である。




2011.4.16

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