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白夜行

【著者】 東野 圭吾    【装丁】 集英社文庫 860頁
【価格】 1000円+税    【発行】 2002年5月

“魔性の女”の話である。魔性の女の要件とは、美人であること、知性豊かなこと、本当の感情を表に出さないこと、などであろう。こうした完璧さが薄気味悪さにもつながるのだが、一方でその魅力にはまってしまう男もいる。
本書の主人公、雪穂はまさしく魔性の女というにふさわしい。
1973年、大阪の廃墟ビルで近所に住む質屋、桐原洋介が殺された。容疑者の一人として質屋の客であった西本文代の名があがるが、彼女も自宅でガス中毒事故により死んでしまう。文代の娘、雪穂は縁続きである唐沢礼子の養子となり、それまでの貧しい暮らしから抜け出す。礼子は茶道、華道、料理などを教えて生計をたてている教養人である。私立一貫校で大学まで進んだ雪穂はソーシャルダンス部へ入り、永明大学生との交流により、東京の資産家である高宮誠と結婚する。しかし結婚生活は長続きしない。高宮は、株で儲け、ブティック経営で手腕を発揮する彼女についていけないのだ。結果、離婚することになるのだが、彼女は次のステップアップをたくらむ。目をつけたのは篠塚薬品の御曹司である。目をつけたといっても自分から声をかけることはしない。相手が夢中になるよう計算しているのだ。
さて、ここに至るまで、雪穂の周囲では様々な事件が起きる。女学生への暴行であったり、私立探偵の失踪であったり、義母の死であったり。こうした出来事によって雪穂に都合のよいように事態が動いていくのだが、それぞれの事件と彼女を結びつける決め手がない。
さて一方、桐原の息子、亮司は成長すると家を出てパソコンショップの経営などを行う。ソフトウェアの偽造にも手を染めるなど、危険と隣り合わせの生活だが、それでも足がつかないのは、同棲している女性にも正体を明かさない徹底した秘密主義のゆえだろう。
事実、本書では雪穂が表の主人公なら、亮司は裏の主人公である。
大阪での殺人事件から19年、雪穂と亮司の周辺を追い続けてきたのが大阪府警の笹垣潤三だ。彼は今にしてようやく、ことの全貌に迫ることができたのだが・・・。
魔性の女には、魔性の女になるだけの理由がある。
もっとも、猫のような目をした美人でなければその資格はない。





2011.4.23

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