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三陸海岸大津波
【著者】 吉村 昭 【装丁】 文春文庫 191頁
【価格】 438円+税 【発行】 2004年3月
2011年3月11日は、日本人にとって間違いなく忘れることのできない日になった。
三陸海岸の変化にとんだ景色を愛し、何回も足を運んで津波の歴史を調べた作家がいた。
吉村昭が昭和45年に著した本書は、「明治29年の津波」、「昭和8年の津波」、「チリ地震津波」と、三陸海岸を襲った三大津波について、実際にその恐怖を体験した人々への取材を織り込んでまとめた臨場感あふれるノンフィクションである。
明治29年と昭和8年の津波は地震によってもたらされたが、いずれも数日前から前兆があった。まずは、かつて経験がないほどの大漁である。イワシやカツオなど、とにかく処理に困るほど魚が獲れたという。また、井戸の渇水や濁りも観察されたとのことである。
そしていよいよ津波がくるときには、ドーンドーンという大砲のような音がし、海上に怪しげな火が見えたと伝えられる。
一方、チリ地震津波は、太平洋の裏側で起きた巨大地震によりもたらされたもので、気象庁もその到来を予測できず、被害を防ぐことができなかった。
それでも、防護施設の充実や避難訓練の徹底などによって、時代が下るにしたがい死傷者や流失家屋は減少した。
ところが2011年、平成23年の大津波は人間の想像をはるかに越える規模で、未曾有の被害をもたらした。
いまは亡き作者とともに、三陸の人々の無念を噛みしめずにはいられない一冊である。
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