このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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小説 消費者金融(クレジット社会の罠)
【著者】 高杉 良 【装丁】 徳間文庫 535頁
【価格】 762円+税 【発行】 2002年10月
学生運動の闘士だった玉崎英太郎は、多少屈折したところがある。消費者金融の道に踏み込んだのも、そうした心情と無縁ではない。
昭和40年代、この業界はいまだ未成熟で、月9分の高利とやくざまがいの取立てが横行していた。玉崎の経営する京橋クレジットも例外ではない。
貸付先に恨まれ、“鬼玉”と呼ばれて新聞や週刊誌にたたかれたほどである。
玉崎は、大学の同窓で通産キャリアの渡辺のアドバイスで、消費者金融先進国・アメリカの実情を視察に行く。アメリカでは、銀行からの低利資金調達による貸出金利の抑制、貸出先の一括与信管理、支払不能先への組織的対応など、信用調査から実行、回収までの仕組みが出来上がっている。まさに、目からうろこの視察であった。
玉崎は帰国後、自社で金利引下げを図るが収支があわず経営破綻する。しかし、そのままで終わらない。債権者と債務者を結ぶ(株)クレジット・コレクション・サービスを立ち上げる。あわせて、クレジット債権共同管理組合を設立し、回収業務に乗り出すが、弁護士会から弁護士法違反として告発されそうになる。
紆余曲折はあったものの起訴までには至らず、多難な道程ではあったが、消費者金融の仕組みの発展に大きく貢献した。
こう書くと固いだけの話のようだが、家族の大切さ、信頼などが話の核をなしていてホームドラマとしての要素もある。
本書発刊以後のことになるが、消費者金融業界は厳しい道を歩くことになる。業績維持のためには拡大が不可欠であるが、限りある市場ではそうはいかない。加えて、2010年6月施行の改正貸金業法で、借主の所得制限とグレーゾーン部分の返却という制約に直面して完全に息が切れた。
健全な消費者金融システムの確立は、なかなか難しい。
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