このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
|
蝉しぐれ
【著者】 藤沢 周平 【装丁】 文春文庫 470頁
【価格】 629円+税 【発行】 1991年7月
昭和61年7月から62年4月まで山形新聞夕刊に連載された新聞小説で、昭和63年5月、文藝春秋の単行本になり、著者の代表作になった。
海坂(うなさか)藩の組屋敷に住む文四郎は、牧家の養子で母親が実父の妹だが、むしろ血のつながりのない父・助佐衛門を敬愛していた。
隣家の小柳甚兵衛の娘・ふくは文四郎より3歳年下で、幼いときには祭りに連れて行ったりする仲であった。そのふくが江戸屋敷へあがることになった。
15歳の文四郎は石栗道場で剣術の修業をし、居駒塾で漢学を学ぶ毎日だ。同年輩の小和田逸平と島崎与之助は、生涯の友である。逸平は幼くして父を亡くしたため、百石の小和田家の当主である。三十石に満たない文四郎や与之助とは身分が違い、すぐに城勤めが始まる。与之助は学問抜群だが、剣術は素養に欠ける。そこで師匠の薦めもあり、江戸へ出て勉学に励むとになった。
事件は、文四郎にしてみれば晴天の霹靂というほかはない。助佐衛門が反逆の罪に問われ、切腹を命じられたのだ。家禄は四分の一に減俸され七石になり、家も長屋へ引っ越すことになった。あとで分かったことだが、父は藩主の家督相続を巡る権力争いに巻き込まれ、連座させられたとのことである。
助佐衛門の名を継いだ文四郎は剣の道を究め、仇敵放逐に力を尽くして牧家を復興させる。
そして、ふくとの再会。
ときは江戸時代、身分制度のもと、地方で暮らす若者の群像が生き生きと描かれている。狭い生活空間の中であっても、さまざまな思いと生活があった。
なんとも名状しがたい愛惜をさそう名作である。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
|