このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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交渉人
【著者】 五十嵐 貴久 【装丁】 幻冬舎文庫 454頁
【価格】 648円+税 【発行】 平成18年4月
人質をとった立て籠もり事件のとき、犯人を説得する役割を務めるのが交渉人である。かつて、こうした事件が発生すると、母親を連れてきて犯人の心情に訴えたり、あるいは強硬手段を示唆して投降を促したりといった方法がとられたが、最近では、心理学の手法を取り入れた科学的対応が確立されてきた。
遠野麻衣子は交渉人として期待され、そのための教育を受けていたが、担当教官である石田警視正との仲を疑われて高輪署へ異動させられる。
そして2年後、品川でコンビニ強盗事件の犯人3人が近くの病院へ立て籠もるという事件が発生した。その交渉責任者になった石田から麻衣子へ、石田が現地へ到着するまでの間、犯人と対応するよう依頼が来る。麻衣子は気持ちを奮い立たせて現場へ向かう。
石田が到着して麻衣子から引継ぎを受ける。さすがにこの分野の第一人者だけに、石田の対応は見事なものだ。教科書通りにことが進んで行く。
犯人の要求はバイク3台と現金1億円だが、これも石田に言わせると想定の範囲内ということらしい。要求にしたがってバイクと現金が用意され犯人の逃走が始まるのだが、そこから意外な結末が待っている。
最初は単なるコンビニ強盗だったものが、なぜこんなに大きな事件になってしまったのか。その落差に違和感を覚えていた読者の疑問は、最後になって見事に氷解する。
現代を映し出した社会派小説といってよい一冊である。
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