このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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真剣師 小池重明
【著者】 団 鬼六 【装丁】 幻冬舎アウトロー文庫 326頁
【価格】 571円+税 【発行】 平成9年4月
SM文学の第一人者として名を馳せ、将棋愛好家としても知られた団鬼六による小池重明伝である。
小池重明は、アマ名人2期連続獲得、読売日本一戦優勝などアマチュア将棋界の頂点を極めた強豪である。加えて、将棋雑誌の企画で実現したアマ・プロ対決では、プロ棋士を連破するなど、センセーションを巻き起こした。相撲と並んでアマ・プロの実力差が大きいといわれる将棋界で、プロがアマに連敗するなどということは、考えられないことであった。
小池は名古屋近くの貧民街で生まれた。住まいはおんぼろアパート、継父は傷痍軍人の物もらいで、母は夜の女という最下層の家庭である。
将棋を本格的に指すようになったのはかなり遅く高校生になってからだが、それからの上達が目覚しい。中部地区の学生将棋大会に1年生で優勝してしまった。
彼はこれを機に本格的に将棋にのめりこんでいく。後に、真剣師として“新宿の殺し屋”の異名をとるまでになったが、名が知られるにしたがって対戦相手がいなくなるといった具合で、なかなか生活が成り立たない。
なにより、常識の範囲を著しく越えた破天荒な性格である。
ついた仕事は数知れず。人妻との駆け落ちは3回。寸借詐欺は常習で、逃亡と放浪の繰り返しだ。金銭感覚はゼロといってよい。
それでも将棋については破格の才能があり、いささかのブランクがあっても衰えることがない。小池はそれまでの不摂生がたたり、平成4年、44歳の若さで亡くなった。著者はうっとうしさを感じながらも、この男の面倒をみつづけてきた。なぜか、迷惑をかけられどおしだったこの男を憎むことができない。
本書は、異端の天才への愛惜のメッセージである。
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