このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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真夜中のパン屋さん
【著者】 大沼 紀子 【装丁】 ポプラ文庫 280頁
【価格】 620円+税 【発行】 2011年6月
明るいことの少ない今だからこそ、ホッコリとした気持ちになれる一冊である。
東京郊外の駅から少し離れたところに、半月ほど前、一軒のパン屋が開店した。少し、というかかなり変なパン屋である。なにしろ営業時間が午後11時から午前5時までだ。店の名はブランジェリークレバヤシという。オーナーは暮林陽介、パン職人は柳弘基、この二人で営業している小さなパン屋である。
このパン屋へ現れたのが篠崎希実という高校生。腹違いの姉である陽介の妻、美和子を頼ってきたのだが、美和子は事故で急死してしまっている。それでも陽介は希実を受け入れ、居候をさせることにした。なにしろこの人は、他人を疑うということを知らないらしい。
希実が居ついてからというもの、この店にはさまざまな人が寄り付くようになる。もちろんきっかけはパンの味に惹かれてだが、そうとばかりは限らない。
水野こだまは、夜昼なく街の中をふらふら歩く小学生だ。そしてあろうことか、このパン屋で万引きをしてしまった。希実はこだまを連れ、彼の家へ行くのだが、その母親というのが尋常ではない。
斑目裕也は脚本家だが出不精で、高層マンションの最上階の部屋から出たがらない。そこへ希実がパンを配達に行き、思わぬ秘密に触れてしまう。
ソフィアは大柄なニューハーフ。希実が駅前でチラシを配っていたところ10パーセントオフにひかれて店にやってきた。
それぞれの登場人物にそれぞれの人生があって面白く、最後まで一気に読み通してしまう。
まるで、テレビドラマを見ているような楽しい本である。
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