このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

八日目の蝉

【著者】 角田 光代    【装丁】 中公文庫 376頁
【価格】 590円+税    【発行】 2011年1月

野々宮希和子は愛人の子を誘拐する。自分に中絶を迫りながら、その2か月後には妻が出産したという。どうにも気持ちの収まりようがない。誘拐した赤ん坊はすぐに返すつもりだ。あの夫婦を少し困らせればよい、と思っていた。産まれて6か月くらいだろうか。勝手に“薫”という名前をつけて呼んでみる。
ところが薫との日を過ごすにつれて、返すタイミングを失ってしまう。
子連れの逃避行になった。泊まる所にも事欠くが、それでもよくしたもので、エンジェルホームという宗教団体のような、ボランティア団体のような不思議な施設に落ち着いた。
希和子はすでに指名手配になっている。閉鎖的な施設にいたおかげで、3年以上警察の手を逃れていたが、コンクールに入選した写真に写っていたため逮捕されてしまった。
物語の後半は、大学生に成長した薫こと秋山恵理菜が主人公である。4歳のとき、実父母のもとに戻ってきたが、どうもしっくりいかない。家族で唯一、親しく接してくるのは妹の真理菜だが、それも恵理菜に気をつかってのことかも知れない。
そこへエンジェルホームで一緒だったという“千草”が訪ねてくる。恵理菜は小さかっただけにホームでのことはよく覚えていないのだが、千草はなれなれしく話しかけてくる。
さて、前半と後半がどのように重なっていくのか、読者の興味はつきない。
それにしても、男性からみれば、女性は理解できても母性は理解できない、ということをあらためて痛感させられる一冊である。




2011.7.21

文庫ライブラリ

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください