橘宣行の彫刻に触れてみよう
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



 



橘宣行 彫刻鑑賞会



[メタルアートミュージアム] 2005年4月

90年代後半、「宇宙戦艦タチバナ」、「銀河鉄道たちばな」、 「グレートマジンガーTACHIBANA」と、話題作を次々と世に送り出し、一躍ブレイクした橘宣行。

「次はきっと“軌道戦士タチバナ”やで」、「いや、恐らく“ゲッターロボ橘だ”」と 湧き上がってくる周囲の推測をよそに、2000年代に入ると橘宣行は、野球盤をあしらった「 スライダースタジアム・ピッチャー山本」、さらには、かつてどの家庭にも必ずあったとさえ言われるボードゲーム を題材にした「人生ゲーム」と、新たな展開を繰り広げてきました。

そして2005年春。その橘宣行が、千葉で個展を開くという情報を聞き、さっそく家族とともに、 会場である 「METAL ART MUSEUM HIKARINOTANI」 を訪れました。


印旛沼の近くにある、のどかな農村の一画に、今回の個展会場「METAL ART MUSEUM HIKARINOTANI」 がありました。金属製の重々しい扉を開けて館内に入ると、温和なイメージの館長さんがあたたかく 出迎えてくれました。橘宣行の大学時代の友人であることを告げると、「どうぞどうぞ。ごゆっくり ご覧下さい。写真も撮っていただいて結構ですよ。」と“館内撮影”の特別ご許可までいただきました。

館長さんに導かれ、館内を後ろに振り返ると、目の前にドーンと、橘宣行の大きな彫刻が そびえ立っていました。




「ランボルギーニ タチバナ」



おお!これはまさしく、我々の少年時代に大流行したスーパーカーの中でも最も人気の高かった、“ランボルギーニ・ カウンタック”を題材にした作品ではないですか。


「靴を脱いで、中に入ってもらって構いませんよ。」との館長さんのお言葉に、チビ・マメコンビも 早速「ランボルギーニ タチバナ」の中に。

そう、作品の中に入り込んで、肌で鋼鉄製の彫刻に触れながら その魅力を体感するのが、タチバナ作品流の鑑賞方法なのです。

「うわぁー、これ、手が動くぅ!!」子供たちが歓声を上げながら、重い「手」を 上下に動かしています。

うーん、そういえば“ランボルギーニ・ カウンタック”って、こんなふうに上下に扉が開いていたよなあ。



徐々に少年の心がよみがえってきたパパガー。子供たちと一緒に、車の中に …じゃなかった、タチバナ彫刻の中に、入ってみました。

扉を開けて中に入ると、まるで 「ランボルギーニ・タチバナ」が、「おいでおいで」と抱きかかえてくれているかのようであります。

「うーん、なんだか本当にスーパーカーに乗ったような気分に なってくるよねえ。」



こうなると、ハンドルを握って実際に運転してみたくなるのが人情というもの。 しかしながら、この「ランボルギーニ タチバナ」、真上に向かって運転姿勢を取らねばならず、 身体の硬いパパガーにとっては至極窮屈な体勢になってしまいます。

女性の館員さんの話によると、「当初はこの作品、普通の車のように作るつもりだったそうですよ。 車の後ろ側の部分も、実際に作っていたそうです。」とのこと。


なるほどねえ…。大仏のようにそびえ立つ姿もインパクトがあるけど、本当に車として 走り出しそうな姿も見てみたい。次回の個展では 後部車体も備え付け、通常のスーパーカー・バージョンで見せてもらえると、作品を 2倍楽しめるかもしれませんねえ。



近くの“大桜の名所”まで教えていただいた、 優しい館長さんと館員さんに感謝しつつ、タチバナ彫刻鑑賞会を終えました。



橘宣行にとっての彫刻とは、人を楽しませるための装置であるものなのです。

鉄を素材に、アニメやゲームを造形のモチーフとし、時には人が乗り込んで遊べるような 作品を、彼は制作し続けてきました。

それに加えて、最近の彼の作品は、我々が少年時代に胸を熱くした懐かしい思い出に 強く訴えてくるノスタルジアを醸し出すようになってきましたようにも思われます。

我々が触れても、また我々の子供が触れても、同じように純粋に楽しむことのできる彼の作品は、 世代を超えて愛される「永遠のガキ大将」とでもいうべきものではないでしょうか。

いつまでも果てることのない「無限軌道」の上を、これからも彼の作品は走り続けることでしょう。








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