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地平線探検記<12.9.29記> 稲穂の向こうに突然一点の光が輝いた。その瞬間僕はシャッターを押した。点状の光はたちまちに拡大し、2分もたたないうちに、まん丸のきらめきとなった。こうなると僕のカメラは用をなさない。
このときの描写を、どう表現していいのか僕はそのすべをしらない。5時頃、周囲の山々は墨絵の世界であり、高雲だけが赤味を帯びていた。田園は薄闇の中である。早出のシラサギが2、3羽水を張った休耕田に降り立っていた。
やがて東の方角が燃えるように赤味を増したと思うと、忽然と太陽が姿を現したのである。この瞬間のカメラアングルはわずかに俯角である。興奮は収まらなかった。まさに地平線発見の瞬間である。
シャッターを押して180度身体を反転する。自分の影が有限の長さでないことを確認するためだ。光の強さは、影の輪郭を際立たせるだけの光量がなかった。しかし明らかに無限のかなたに伸びている。はるか彼方には妙義山、浅間山が連なっている。影の方角は浅間山であった。
およそ地平線は見られないと思っていた。地形図を見るかぎり理論的には地平線が見られるはずである。群馬県の平野部は、東京などと違って地形がかなりフラットである。したがって障害物さえなければ地平線が見られるだろうと思っていたのである。実際に撮影した写真を見ると、建物や樹木のわずかな隙間に運良く太陽が現れたに過ぎない。
僕は常日頃デジカメを携帯することにしている。「群馬の歳時記」ページのネタ探しである。この朝もめずらしく空気は澄み渡っており、暁闇の美しさを何枚かカメラに収めていたところだ。
地平線の日出
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観測データを次に示す。
項目 | 観測点 | 前橋地方気象台 | 観測日 | 2000.9.28 | − | 太陽の頭が光った時刻 | 5:38 | − | 読売群馬版日出時刻 | − | 5:36 | 地平高度 | 0度? | − | <測位データ> | − | − | 北緯 | 36度19分02秒 | 36度24分01秒 | 東経 | 139度08分38秒 | 139度03分09秒 | 海抜 | 推定68m | 112m |
ところで、日出・日入とは、「太陽の上辺が水平線(地平線)に接した瞬間」と定義されている。一方、水平線までの距離は身長1.7mの人で4.7kmだそうだ。これらのことから上記の観測データを分析すると、まさしく地平線から昇る太陽を見たのだと確信した。
365日、太陽は刻々とその位置を変える。健康である限り今後も僕の「地平線探検」は続くであろう。
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