このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

蚕観察日記(繭編)  (目次に戻る)

07/13繭(まゆ)作り
  今朝、飼育箱の清掃をするために、蚕を別の箱に移動し始めました。ところが箱の隅に繭を作り始めた蚕がいるのには驚きました。数えてみると9頭です。桑の葉を丸めて繭を作っているものもあります。
 ここで貴重な現象を確認しました。蚕のオシッコです。蚕は一生の内で、たったの2回しかオシッコをしないそうです。一回目は繭に入る直前、二回目が繭から出てきた蛾がするのだそうです。その一回目の瞬間を目撃できたのは、まさにラッキーでした。意外に多量のオシッコを一瞬のうちに放出しました。できれば2回目もその瞬間を目撃したいものです。


飼育箱に繭を作った


オシッコと茶色の糞

 糞も今まで真っ黒だったのが、繭作りが近くなるに連れて、緑色・茶色・ベージュ色・白色と変わってきます。繭になるための蚕は、桑を食べずにひたすらウンコをするので、葉緑素がなくなっていくのでしょうか?。最後の白いウンコはピンセットで掴もうとしても、もろくて崩れてしまいます。


糞の色が変わる

 蚕は腹が空っぽになって、体長も短くなります。触っても、今にもつぶれそうな頼りなさです。繭の容積を小さくする術でしょうか。
 僕の予想では、糸を吐き始めるのは、今日の午後あたりだろうと思っていたのです。それにしても糸を吐く前兆として、身体の色が透きとおった黄色になり、頭を振るようになる筈ですが、全体的にそんな状態には至っていません。
 一瞬慌てましたが、昨日のうちにある程度は準備していたので、その後の動きは敏速でした。脚立を2基据えて竹の棒を渡し、回転蔟(まぶし)をぶら提げました。蔟というのは、繭をつくるアパートのようなものです。
 実は、蔟を自分で作り始めたのですが、大変な作業だと分かりました。思案して、ウォーキングコースで知り合った農家のオバサンに相談しました。その結果、翌日には繭作りに必要な道具を車で運んで来てくれたのです。

回転蔟
回転蔟

 蚕は体長70mm前後、はち切れんばかりの冷たい肌です。午後になって、前兆を示す蚕が多くなりました。黄色はそれ程目立ちませんが、透き通った感じは分かります。桑を食べなくなって動作も緩慢(かんまん)、何かを捜し求めるように首を左右に振ります。こうなったら、蚕を蔟に移すのです。このことを上蔟(じょうぞく)といいます。


上蔟前日

上蔟
上蔟当日

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07/16 繭作り色々
  繭を作らせる方法として、頭数が多い場合は回転蔟が効率的です。場所もそんなに取らないし、作業のし易さでも優れています。しかし観察を目的とする場合は、普通20頭程度のことですから菓子箱がいいでしょう。
 僕の場合は、1蛾(が)500粒の卵から飼育をスタートさせました。繭作りの個室は2倍の1,000室ほど必要です。蚕は部屋の好みが結構うるさいので、満室で住んで貰うことができないのです。それで回転蔟を使いました。


竹竿から針金で吊るして回転


ここへ作ろう


繭作り上形が決まってきた


まばゆく光る

 自分で作った菓子箱と、多少遊び心で竹箒(たけぼうき)も使ってみました。竹箒は蚕にも気に入られたようで、僕も満足しました。自由なデザインで我が家を作れる点がいいのでしょうね。野生の本能に最も適応した素材ではないでしょうか。

上菓子箱の家


画用紙を2枚重ねで作った



竹箒もいいや!

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07/20

繭の中

  繭作りは、7月13日から18日まで5日間かかりました。この間、繭を作る熟蚕段階で、吐糸が出来ずに死んだものと、吐糸の途中で死んだものとが20頭ほどいます。桑を食べている段階では、ほとんど死ななかったのに比べて大きい数です。
 いささかショックでしたが、日中の気温が連日人間の体温以上あったことが大きな原因ではないかと思います。昼も夜も換気には気を遣っていたのですが、蚕は終始夏ばてのようでした。適温は22〜28℃だそうですから、我が家の環境は劣悪です。
 今でも群馬県のあちこちに見られる養蚕造りの民家は、換気を重視して生産性を高めていることを如実に物語っています。

養蚕造りの民家
養蚕造りの民家


 とにかく繭作りは終わりました。さて飼育観察はまだ続きます。繭の中の様子を覗いて見ましょう。
 写真の蚕は、7月16日に吐糸を開始しました。左の写真は19日の朝です。糸を吐き終わって身体が縮んでいますが、まだ幼虫と同じです。右の写真は、20日の朝です。脱皮をしてになりました。抜け殻が脇にあります。繭を作り始めてから、3日目には蛹化(ようか)したものと思います。ついでのことに、観察をし易くするために、繭をピンセットに載せて安定させました。


まだ幼虫の姿です

蚕の蛹
蛹になりました

 さて、ここで繭のカットの仕方をご紹介します。例によって僕のアイデアです。

  1. カッターナイフを用意します。刃は新しいものに取り替えておきます。
  2. 繭を机の上に置き、転がって停まったとき重心が安定して蚕は下にいます。
  3. 繭の中心において、水平線を仮想します。山の8合目当たりの等高線を仮想して、ナイフで長手方向から切っていきます。ナイフの使い方は、鋸を挽くようにすると、繭にひずみを与えずにきれいに切れます。最後まで切り取らないで、わずかに残すと、チョウツガイみたいになって蓋をめくって中が覗けます。
  4. これだけで観察は可能ですが、写真を撮りたいのであれば、もっと広げなければなりません。そこで今開いた覗き窓から確認しながら、できるだけ蚕すれすれに再度ナイフを入れます。写真では1合目辺りで蓋を開くことが出来ました。
  5. 観察が終わったら蓋を閉じて、輪ゴムかセロテープで押さえておくといいでしょう。もし吐糸の途中だった場合は、蚕が蓋を綴じ直してくれます。

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07/21 繭の天日干し
  すべての蚕が繭になりました。そこでこれの使い道です。まだ観察は続いていますから、それに必要な数だけは確保しておきますが、その他の繭は放っておくと穴を開けて蛾が出てきます。
 用途は後で考えるとして、とりあえずは蛹を殺さなければなりません。あえてむごい言葉を使いましたが、現実を直視するのも大切です。その代り、相手に感謝し無駄にしない気持ちが湧いてくるでしょう。
 飼育中は気温の高いのに悩まされましたが、その逆手をとることにしました。繭を天日干しにするのです。強い日差しを受けて、熱と乾燥によって蛹は死ぬのです。


天日干し

 この作業において繭の数を数えました。344個です。観察用の別置き繭を合わせて、生産量は365個です。最初に孵化した数が約500ですから、歩留まりは73%ということになります。
 幼虫の成育期間中で、目で確認できた死亡頭数は20頭位ですから、ほとんどが目で確認できない蟻蚕の段階で死亡したものと考えます。

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