このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


子供の頃
 終戦前後の生活 ●

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どんぐり拾い

  1. 生徒たちが山へ仕事に行くのは他にもあった。どんぐり拾いである。何のために拾うのかは覚えていないが、粉末にして食料にしたのだと思う。

    どんぐり
    どんぐり
  1. それぞれ家からビク(腰篭)を持ち寄って学校へ行く。先生の引率で目的地へ向かう。ビクは腰に縛り付ける。そして腰弁当だ。肩から袈裟懸けに背負う者もいる。

    ビク
    ビク
  1. ビクにどんぐりが段々たまってくると重くなる。いっぱい拾った頃にお昼である。母ちゃんの造ってくれたお弁当がおいしい。
  2. 収穫したどんぐりは学校に戻って、講堂の板の間に集める。間もなくどんぐりはどこかへ運ばれていく。働いた成果がどっかで役立っているんだな〜と子供ながらに思ったものだ。

<備考>このページをご覧下さった神奈川県の小学校の先生からメールをいただいた。先生は、6年生に「どんぐりと戦争」と題する単元で社会科の授業をしているとのこと。学習指導案から抜粋して、どんぐり拾いの背景と目的について、次のような情報を提供して下さった。(2001.12.4)

提供していただいた資料
<学習指導案抜粋>

 「どんぐりと戦争」と題するこの単元は、昭和17年9月全国森林組合連合会が配布した『小國民諸君』(小国民と原文ではなっている。本当は少国民か)という1枚のチラシを素材としたものである。
 当時、全国森林組合連合会は戦争物資の調達機関として国から要請を受け、全国の尋常小学校(後に国民学校)にどんぐり拾いを呼びかけたのである。
 昭和13年には国家総動員法が発令され、さらに、綿糸、石炭、ガソリンなどが配給制になっている。
 こうした時代背景の中で、このどんぐり拾いが始まったのは、昭和15年のことである。
 神奈川県森林組合連合会の協力で昭和17年のどんぐりの全国総量や売却先などの事実が判明した。また、神田村国民学校卒業生からも、どんぐりを集めた証言を得ることができた。
 戦後半世紀を迎えようとしていた1993年、戦時下の庶民の体験を語りつぐ人は少なく、徐々に風化していく傾向にあった。直接体験している人ですら当時の生活の様子を詳細に語れる人は意外に少なかった。
 そこで、複数の人物の記憶をつなぎあわせながら教材化の作業に取り組んだ。
 神田村国民学校の子どもたちが、昭和17年の秋に拾い集めたどんぐり(樫の実・米俵1俵分)は、同年12月22日、日本通運平塚支店から、当時横浜にあった神奈川県森林組合連合会に送られている。さらに、各県の森林組合から全国森林組合連合会に集められた。
 この年のどんぐりの全国総量は9,183石(22,957・5俵)にものぼり、総額6,617円で売却された。
(売却先=日本甘藷馬鈴薯(株)・飼料配給(株)・農林工業会(株)・化学興業所)
 これらのどんぐりは無論、工業原料として活用され、売却益は軍事献金として国に納められた。
 正確な比較ではないが、昭和17年の生産者米価は、1俵16円90銭である。平成5年の生産者米価は16,392円、ということから試算すると、現在の金額でおよそ641万8千円ということになる。
 昭和17年の直接軍備費は188億4千万円である。この金額から考えると、どんぐりの売却益は極めてわずかな部分しか担っていない。「国家総動員」という精神の発露として、あたかも踏絵のように国民は様々なことを要求されたのだろう。
 当時の人々にとっては当然のことのように受けとめられたこれらの奉仕作業が、実際の金額を示すことで、現代の子どもたちにどのように映るのか、興味深いところであった。

<先生のコメント>

 また、ウサギの養育とそれに伴う毛皮の生産は、当地でもさかんに行われたそうです。やはり寒冷地用軍服などの生産を向上させるためだったそうです。(注)

 どんぐり拾いに話をもどしますが、私の知る限りでは、北は秋田県、西は島根県でのどんぐり拾い経験者がいらっしゃいます。やはり、全国規模で実施されたことはまちがいないようです。

 気になるどんぐりの用途ですが、

  1. どんぐりからタンニンを抽出し、兵器や馬具に使われている皮革類をなめすのに使った。

  2. どんぐりからアルコールを作り、タンクや自動車の代用燃料にしようとした。(これは、実用化されたかどうか、未確認です。)

  3. 家畜の飼料にした。(「豚や鶏をたくさん飼って栄養を十分つけて強い人になりましょう。」と訴えています。)

 注意書きとして

  • 虫食いや腐った団栗は役に立ちません

  • 団栗は水で洗わず、よく日にほしてください

 とあります。

(注)ページトップの目次「家畜」に関連する事項です。そちらをご覧ください。

<参考サイト>
犬山高校のあゆみ (小國民諸君ー團栗を拾って下さい)』のチラシ画像が掲載されているサイト

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