このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


子供の頃
 終戦前後の生活 ●

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の栽培

  1. 戦中戦後は食料不足のため、空き地はもちろん校庭まで畑地にされた。僕達が作ったのは、サツマイモとジャガイモだった。どちらも芋だが、サツマイモはヒルガオ科、ジャガイモはナス科である。また、サツマイモは根が太って芋になるが、ジャガイモは茎が形を変え芋になる。作り方にも違いがある。サツマイモは蔓苗を土の中に埋めて育てるのに対して、ジャガイモは種芋を土の中に埋めてやる。
  2. サツマイモの場合、今は苗を購入することが多いが、昔は苗作りから行なった。よく覚えていないのだが、確かお袋の作り方はこうだった。先ず苗床の周囲に杭を打ち、板で囲いをして内側に保温の目的で麦藁の束を垂直に立てて並べる。その中に苗床の土を入れて、GLより少し高くする。

    サツマイモの苗床
    サツマイモの苗床

  1. 次に種芋を床土の中へ埋め、保温のためにガラス戸を被せるという手順だったように思う。言ってみれば、温床で苗作りをしたわけだ。当時はまだプラスチックが登場していなかったので、今でいうマルチなどはなかった。温床にはガラスを用いたのである。何日かすると萌芽し、20cm位に伸びたらその蔓を切り取って苗にする。

    サツマイモの苗作り
    サツマイモの苗作り

  1. 一方ジャガイモは種芋そのものを、芽の出る部分がほぼ同数になるように2〜4個に切り分ける。腐れ防止のために灰を入れた容器に入れて、切り口に灰を付ける。その切り口を下向きにして、畝に置いて土を被せるという具合だ。

    ジャガイモの種芋
    ジャガイモの種芋

  1. サツマイモは痩せた土地でもよく育つし、連作したほうが甘味も増すらしい。そんなことから比較的作りやすく、校庭だけでなく、川原の高洲などにもよく作られた。
  2. ジャガイモは結構手がかかった。芽が出て茎が何本か出たら、元気のいい茎を2本残して後は掻き取らなければならない。それに追肥をやる必要がある。昔は肥料といえば下肥が多かった。つまり人間の糞である。
  3. 昔は水洗便所などはなく、汲み取り便所であった。キンカクシという便器の1mほど下に便壺を置いていた。用を足すと、臭いだけを残してストンストンと落下する。小便が多いと飛沫が尻に跳ねるので、これを「お釣がくる」と言っていた。
  4. 便壺の脇には外し戸があって、便壺から肥柄杓(こえびしゃく)で肥桶に汲み取り、天秤棒で担いで運搬する。これがまた臭いのなんのって!!。本当は、便壺から、一たん野ッパラの肥え溜めに移して完熟させれば臭くないのだが、そのスペースと手間を当時は節約したかったのだ。
  5. 話はそれるが、僕自身が肥桶を担いだのは中学生になってからだと思う。天秤棒のしなう調子に足の運びを合わせないとピチャピチャはねるから一見難しそうだが、やってみるとすぐにコツを覚えて結構面白かった。僕の家の畑は駅のすぐ近くにあったので、お袋が官舎の線路工夫長(こうふちょう)に頼んで、駅の下肥を使わせて貰った。僕は駅と畑を何度も往復したものだ。収穫の時はお袋が穫れた物を持って工夫長の所にお礼に行っていた。

    肥桶担ぎ
    肥桶担ぎ

  1. 話を元に戻すが、下肥を柄杓でジャガイモの畝に沿って撒いていく。そのあと鍬で土寄せをして畝を高くする。そうすると臭いもかなり消えるし、蝿もたからないので近所の住民に迷惑をかけることもない。

    肥やし撒き
    肥やし撒き

  1. 下肥はやがて土の中で完熟し、ジャガイモはその養分を吸収してすくすくと育ってくれる。実に合理的な資源リサイクルの循環型農法であったのだ。

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