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山の幸
- タラノ芽・ウド・ワラビ・ゼンマイ等は今でも山の幸であるが、食糧難の時代であるから食べられる物はなんでも食べた。
- リョウブという木がある。この木は広い屋敷の庭園や、公園なんかで見ることができる。幹の素性が良くて肌がきれいな木だ。農家ではエンドウマメやササゲの手として使われた。僕は母親の命令で、裏山へリョフブの若芽を摘みに行った。これを押し麦と一緒にご飯に炊き込むのである。しかしリョウブは渋くてあまりおいしいものではなかった。
- マツブドウというのがある。植物辞典にはマツブサとなっている。一般にいうヤマブドウとは違って、長さ7,8センチの軸にブルーベリー位の大きさの黒い実がびっしりとつくのである。このまま食べてもおいしいが、ワインにするのが最高だ。僕はこれを採って来て自分でワインをつくった。そして正月の食卓を飾るというわけだ。
実は、最近(12.10.21)たまたま田舎に行く用事ができた。そこで僕はチャンスとばかり、マツブドウに再会することにした。18歳で故郷を離れてから45年振りの訪問である。岩塊の痩せ尾根を辿り、松林から広葉樹の林に入り、目的とするガレ場に着いた。少年時代の記憶は、僕の足を迷うことなく、その場所に向けさせてくれたのだ。
ガレ場には蔓性の植物が多い。その理由を自分流に解釈するならば、表土が露出していないので植林ができないためであろうと思われる。つまり人間による植生への侵略がないので、原始の状態が維持されているのであろう。
そして僕はマツブドウに再会した。高木に絡まって上部から垂れ下がっている蔓を引き寄せ、最初の房を口に放り込む。懐かしの松のような香りとともに、甘酸っぱい果液が口中にひろがり、そしてタネを噛み砕いたときのほろ苦さが一気によみがえった。
マツブドウ(マツブサ) ブドウの形状
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- シラクチというのがある。僕の地方ではヒラクチという。別名サルナシである。ちなみに徳島県の祖谷かずら橋は、シラクチの蔓で造ったものだ。 シラクチの実は、キウィフルーツに似たものだと思えばよい。蔓も葉もそっくりである。違うのはシラクチの実の大きさが長さ2センチ位で、皮が滑らかで緑色をしている点である。そしてまた果肉の色も味もキウィフルーツと同じである。秋になると実が熟れて柔らかくなり食べられる。あまり食べ過ぎると舌が割れていたくなる。
キウィフルーツは中国の原種をニュージーランドで改良し、果実を大きくしたものだそうだ。シラクチとともにマタタビ属である。
僕の田舎ではシラクチを栽培し、サルナシワインとして郷土の特産にしようとする研究が、熱心な村民によって進められている。
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