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鉄索
- 別項で木馬(キンマ)で材木を運ぶことを書いた。キンマの場合は高い場所から低い場所へ運搬することであった。とこえろが谷越えで材木を運搬する場合がかなりあるのである。その場合はキンマは使えないので、空中運搬を考えなければならない。それが索道と呼ばれるもので規模の大小はあるが、要は谷越えでワイヤーロープを張り、滑車を使って運搬する方法である。
索道の風景
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- 最も規模の小さいもので、僕たちの村で鉄索(てっさく)と呼ばれていたものがある。山のあっちとこっちに架台を据え付ける。主索と呼ばれるワイヤーロープを張る。上駅の架台に車輪を設置し、それを通して曳索と呼ばれる細いワイヤーロープを張る。その曳索の両端に搬器を取り付ける。搬器には滑車が付いていて、主索を転がるように引っ掛ける。搬器相互の位置関係は一つが上駅にあるとき、他方が下駅にあるようにする。上駅で木材を積んでブレーキを外せば、釣瓶(つるべ)の原理で重い方が落下し、軽い方が上に上がって行くという極めて単純な発想である。
鉄索の原理
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- 実際には安全でかつ効率のいい作業を行なう為に、鉄索の架設にはその場所や、何を運搬するかによって様々な手法と工夫が駆使される。規模が大きくなれば尚更だ。
- 僕は平成10年頃だったか、中央アルプスの南端を飯田市から南木曽町に大平峠を車で越したときに、大掛かりな索道作業に出っくわしたことがあった。鉄骨のストラクチャを構築したとてつもない鉄索で、今まさに茶色い木肌の大木が急傾斜の谷底へ静かに下降していくところであった。こうなると、もはやエンジンウインチを利用していることは疑いの余地がなかった。
- 思うに、林業が衰退し荒れるに任せた山ばかりだと思っていた矢先に、屈強な若者達がヘルメットを冠って立ち働く姿をみたとき、言い知れぬ感動を覚えたことを思い出す。
<備考> 現在この種の業務に就く人達は、労働安全衛生法に基づく「林業架線作業主任者」の免許試験が課せられている。
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