このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


子供の頃
 終戦前後の生活 ●

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ヤス突き

  1. 奈良井川は信濃川の上流に位置し、中央アルプスを源流としている。その清流には、イワナ・ヤマメ・ハヤなどの魚が生息している。大人は釣りや投網で魚を獲るが、子供はスイメンとヤスを使ってカジカを獲るのが一般的だ。カジカは川の底にへばりついて、動かない習性があるので獲りやすいのである。

    カジカ
  1. スイメンというのは、舟形をした木の箱の底にガラスを嵌め込んだ構造をしている。これを水に浸けて少し強く押し付けると水中が良く見える。長い時間、水に浸けていると、段々水が浸入してくるので、そうならないようにガラスを嵌め込んだ部分は、蝋を溶かして目地を固めておくことが肝心だ。

    スイメン

  1. 上流に向ってスイメンをあちこちに移動して川底を覗いているうちに、たいがいカジカを見つけることができる。ヤスを尻尾の方からそ〜っと近づけて狙いを定め、素早く突き刺す。ヤス突き漁法は縄文からの伝統漁法だ。

    ヤス

  1. 獲ったカジカは、スイメンの舳先の部分に針金が張ってあるので、エラから口に通して蓄える。針金がいっぱいになったら、岸のヤナギの枝などを折ってそれに通すのである。

  1. たまには、タナビラ(ヤマメ)などに遭遇することもあったが、ゆらゆらと動くので、胸が高鳴るばかりで空突きとなってしまい、遂に一匹も獲れたためしが無かった。
  2. カジカは家に持って帰ると、お袋がカラ揚げにして夕食に出した。僅かな収穫でも、食糧難の当時としては貴重な蛋白源であった。
  3. たまにはヤツメウナギなども獲れることがあった。目の後ろに7つのえら穴があり、本物の目と合わせると八つに見えるので、この名が付いた。水の澄んだ流れの緩やかな浅いところに生息している。口で吸いつく習性があったような気がする。大きさは20㎝位。

    ヤツメウナギ
  1. 今になって調べてみると、砂ヤツメという種であることが分かった。幼生(ようせい)は泥の中に潜って有機物やけい藻類を食べて成長し、落ち葉等の有機物がたまる場所が失われると生息できなくなる。環境庁レッドリストで、絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。
  2. はたして故郷の川に今でも生息しているのかどうか心配だ。というのは、水質は維持されていても、一つの大きな問題がある。昔と違って、それぞれの支流に堰が築かれたことだ。その為に魚が行き来できなくなってしまう。小さな川なので魚道までは設けられていないのだ。
  3. なぜ堰が出来たかというと、水道源として、あちこちに採水施設を造ったからである。昔は石でちょこっと堰きとめて土管で導水し、別に消毒することも無く飲んでいたから、堰など造る必要が無かったのである。
  4. 現在は水道法による簡易水道として、法の規制を受けることとなった。取水をキチンと管理するためには、コンクリート堰にしないと、安定した水質が得られないという訳だ。
  5. いささか回りくどい話になってしまったが、結果的に狭い領域に魚は閉じ込められてしまった。そんな訳で近親繁殖が重ねられてしまい、魚が激減してしまったのだと土地の釣り名人が嘆いていた。その論法には僕もしきりに頷いた。

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