曲名のルーツを探る 地元小学校のサイト掲示板に曲名探しの助けを求めたが分からなかった。もしかしたら当時、小学校の音楽の先生の作詞・作曲かもしれないと考えた。ツテを介して今は施設に入所しているという恩師に聞いて貰った。恩師のいうには、どこかから引用した歌だというのだ。 そこで Googlの検索威力に頼ることにした。先ず、歌い出しを「さらさらさらと」で検索したがヒットしない。 次にキーワードを「小川の水」で検索したところ、べら棒な数でヒットした。そこで「唱歌 小川の水」で検索してみた。その結果、ヒットした2番目のサイトによく似たメロディーを発見したのである。「散歩唱歌」と「散歩」の二つの歌である。 「散歩唱歌」は大和田建樹(おおわだけんき) 作詞・多梅稚(おおのうめわか) 作曲である。春夏秋冬を詠った50番までの長い詩で構成されている。譜面無しで散歩しながら歌えるだろうかと疑問符をつけてしまう程だ。この二人は鉄道唱歌のコンビと言えば分かりやすい。明治34年(1901)に発表されている。一方「散歩」の方は先ほどと同じ曲に、昭和22年(1947)勝承夫(かつよしお)が改詞しているのである。こちらの方は2番構成の簡単な詩である。 ここで僕特有の推理エンジンが起動した。「散歩」が発表された昭和22年といえば、終戦の翌々年である。敗戦によって軍歌が廃され、軽快な平和の歌として「散歩唱歌」がリバイバルしたのである。しかし歌詞はいかにも古文体である。そこで現代文に改詞されたというわけだ。「散歩」は昭和22年5月文部省発行の「二ねんせいのおんがく」に登場した。 ここまで調査と推理を重ねた時点で、僕は「津島様」の元歌が「散歩」であろうと確信するに至った。ちなみに教育基本法が施行されたのは、昭和22年3月31日。特徴的なのは「男女共学」である。それまで津島様の祭りが男児だけだったのが、この年から女児も参加するようになった。 さて、伝統芸能である津島様の行進曲に「散歩」を採用しようとしたのは、前述の経緯を考えると、むしろ必然の成り行きであろう。しかし「散歩」の歌をそのまま歌わせるには、何となく不安を感じたのかもしれない。ここは国定教科書とは無縁の立場を取って、独自性のある歌にした方が無難であると考えたのではなかろうか。 その結果、4行詩を5行詩にして1番だけとし、メロディーも少し変えて独自性を持たせた。僕に記憶はないが、黒板に楽譜を書いてオルガンを弾き、直ぐに覚えさせたのではないかと推測する。 推理はこの辺にして、それぞれ曲を聴き比べていただきたい。双子のような響きを感じないだろうか。なお、今回の現地における聞き取り調査をお願いした、木曾郡楢川村在住の麗子さん、採譜をお願いした京子さん並びに贄川小学校の先生には、労多いご協力をいただきました。お礼申し上げます。 津島様 (コントローラーの再生ボタンを押すと演奏します。)
散歩
散歩唱歌(春夏秋冬)
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