このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


 ここへ行ってきました 

  (目次に戻る)

23.10.11〜12八方池・栂池自然園

 何十年前になるだろうか。どこかで見た写真が実に魅力的な山岳写真だった。そのときには、その場所がどこだか分からなかったが、まさに雲上の楽園そのものだった。後から分かったのであるが、それは北アルプスの北端に位置する、長野県白馬村(はくばむら)の八方池であった。一度は行ってみたいと思いつつ、なぜか実現しなかった。それが今頃になって、やっとかなったのである。

<1日目:八方池>

  1. マイカーで前橋を3:30に出発。夜明けに白馬村に着いた。白馬駅でゴンドラの割引券を購入し、村営の無料駐車場に停めて8:00始発の八方アルペンラインに乗った。この時間、客はまだ少ない。リフトを2回乗り継いで、標高差1,060mを一気にかせいだ。高度が増すごとに緑から紅葉、そして枯葉へと様相が変わる。三段紅葉と称して、上から下へ向かって、しだいに色づくのであるが、今年は10月2日に冠雪があり、色づく前にそのまま枯れてしまったという、草もみじを撮りにきた写真マニアの話だった。


    リフトを乗り継ぐ


  2. リフトを降りたところに八方池山荘があり、そこからが八方尾根のトレッキングコースとなる。この尾根は、白馬連峰の主峰のひとつ、唐松岳(2,696m)付近の稜線から延びている。なだらかな尾根で、入山のアプローチとして人気がある。辺りはすでにナナカマドの葉が落ちて赤い実になっていた。尾根の右手は深い谷になっている。左側の斜面から朝霧がのぼってきては消え、行く手の尾根筋が見え隠れする。今日の天気は天空に巻層雲が広がり、抜けるような青空とはいいかねる。行く手に白馬三山と呼ばれる白馬岳(しろうまだけ)・杓子岳・鑓ヶ岳五竜岳などがベールに包まれて、流れる雲の切れ間にときどき姿を現す。登っては歩を緩め、山の姿を求める。
     ところで白馬岳(しろうまだけ)という呼び方は古くから春の雪解けのころ、田んぼの代掻き馬の雪形が見られ、それを農耕時期のサインに利用したことに由来するという。高山植物などの学術上の名前は「シロウマ」を冠するものが多いが、白馬村その他もろもろの呼び方は「はくば○○」である。


    八方尾根


  3. やがて標高2,060mの八方池が見えてきた。"雲上の八方池"という表現に誇張はない。ここまでがトレッキングエリアで「八方尾根自然研究路」と呼んでいる。これより上は登山エリアである。ここまでが我々の到達点で1時間ほどシャッターチャンスを待ち続けた。谷底からひっきりなしに霧が湧いてきて雲と化し、様々に変容して峰々を覆いがちだ。 連続した稜線を見ることはできなかった。まずは八方尾根の東斜面の右に不帰嶮(かえらずのけん2,614m)を見る。不帰キレットの右には、雲に隠れて見えないが天狗ノ頭へと続くはずである。


    八方池が見える


  4. そのうちに右側の連峰も見えてきた。天狗ノ頭(2,812m)・鑓ヶ岳(2,903m)、判然としないが杓子岳(2,812m)・白馬岳(2,932m)の順に稜線を確認できた。汚れた万年雪の上に新雪が輝いて見える。
  5. ところで、八方池はなぜ出来たのだろうかという疑問であるが、それの説明板が建っていた。雪が押し流した土砂が堆積してできた池であり、この池にはサンショウウオやモリアオガエルが生息しているという。
     小波が左から右へゆらめき、遠くを見ながら視界の端にそれが映ると、自分の身体が左側に移動しているような錯覚を感ずるのであった。八方池の畔りに小1時間ほど滞在し、雲上の楽園を後にした。


    八方池と谷を越えて白馬連峰


  6. 谷から湧き上がってくる雲は、山稜全体を見せてはくれなかったが、風の弱い穏やかなトレッキング日和だったというべきか。

    雲上の楽園・八方池


  7. 山を下ってゴンドラ兎平駅のオープンテラスで昼食、この辺の紅葉はまあまあだった。スキー場のゲレンデ丘を利用して、若者達がパラグライダーで上昇気流を楽しんでいた。


    帰りのゴンドラから写す


  8. このあと隣村の小谷村(おたりむら)へ向かう。今日の泊りはホテルグリーンプラザ白馬である。時間はたっぷりで、途中、栗や胡桃拾いをした。清掃工場の敷地で沢山の胡桃を見つけ、しめしめと拾っていたら、従業員の男性がきた。てっきり怒られるかなと思っていたら曰く、「拾うのはいいけど、清掃工場から少しはダイオキシンが出るので、それを気にしなければどうぞ。この辺の人たちは拾いませんよ。」と笑っている。これには気がつかず、せっかく拾ったくるみを投げ出した。とんだ笑い話になってしまったものだ。
  9. ならばと言う訳で、「道の駅小谷」に寄り道をした。訳ありの信州リンゴがあれば土産に買おうと思ったのだが、正規の箱詰めしかなく、高いので買うのをやめた。驚いたことに扱っている商品はほとんどが加工品で、我が群馬県のように地場産の野菜売り場というイメージが全くないのである。そのあと何箇所か胡桃を拾い、ホテルに向かった。
  10. 山道をくねくねと登り、道を間違えたのではないかと心配しいしいカーナビに案内されて行くと、林が開けた広大な駐車場の先に、赤い屋根の壮大なホテルが姿を見せた。それにしても自家用車がほとんど見えないので、これではホテルも赤字なのではないかと余計な心配をしてしまった。何はともあれチェックインし、部屋に入って疲れた足を投げ出した。山の疲れよりも未明3時起床の眠気のほうが強かった。部屋は和洋室で畳の間があるのは我ら年寄りには有難い。予約したのは「栂池パノラマパックプラン」というもので、ゴンドラ・ロープウェイ乗車券+入園券+弁当+茶のセット付きである。ゴンドラ駅までの無料送迎は断った。マイカーの方が効率よく動ける。

<2日目:栂池自然園>

  1. 八方池と並んでトレッキングコースを競っているのが、ここ小谷村(おたりむら)の栂池自然園である。隣り合った村同士で相乗効果を出している。八方池が尾根歩きを楽しむのに対して、栂池自然園は北アルプスの懐に抱かれた湿原歩きを楽しむという違いをみせる。


    平原状樹林帯の向こうが栂池自然園


  2. 栂池自然園は日本でも有数の高層湿原であり、池塘が点在する。落葉樹の紅葉、草もみじ、ダケカンバの白とオオシラビソの濃緑、それにビロード状に見える笹原など、全てが調和した鮮やかな景観である。


    池塘と樹林


  3. 白馬連峰の山懐に抱かれている、1,900m前後の栂池自然園。昔から土地の人たちが"ツガ"と呼んでいたことから、名付けられたのだが、実際にはオオシラビソである。この樹林帯を通るとき、何とも甘い香りが漂っている。園内はゆるやかで、湿原の散策路には木道が敷かれ、最も高い展望台付近が山岳風景を呈している。木の間をとおして白馬岳と杓子岳が、その谷間には大雪渓が望める。


    白馬の大雪渓


  4. 入口に戻ってビジターセンターで復習する。栂池自然園は白馬乗鞍岳の火山活動により、三つの断層が発生して、そこに平坦面ができた。その一つが栂池自然園である。その平坦面の凹地に池ができ、ミズゴケやワタスゲなどがはえた。これらの植物は枯れても腐ることなく、寒冷な気象条件のもとでは泥炭化し、その上に新たな植生が生まれた。こうして、長い年月をかけて現在の栂池自然園がある。


    湿原の俯瞰


  5. 紅葉に色ずく栂池自然園は、そこから徐々に麓へと移動する。この日は自然園の中はすでにナナカマドやダケカンバの葉が落ちていたが、白馬連峰の山の斜面は、ナナカマドの紅葉と、ダケカンバの淡い緑葉が鮮やかであった。山の南面で日当たりが良いせいか、新雪の被害を受けずに済んだに違いない。
  6. ゴンドラで山を降りてから、ホテルから貰った握飯を食べた、今回のトレッキングは首尾よく終えた。帰りはリンゴの名産地、須坂市のJA井上共選所で、わけありリンゴを買い込み、すぐ近くの須坂長野東ICから高速に乗った。

(目次に戻る)  

 

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください